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「危険性高い」「判断早過ぎる」 オスプレイ知事容認 理解の声も

 米軍岩国基地(岩国市)に海軍の輸送機オスプレイなどが配備される計画を巡り、村岡嗣政知事が容認の意向を表明した29日、基地周辺などの住民からは、なおも安全面への不安や議論の不十分さを指摘する声が上がった。

 「周辺住民は墜落の危険にさらされる。納得できない」。岩国市の市民団体「岩国平和委員会」事務局長で、基地近くの同市尾津町に住む吉岡光則さん(78)は語気を強めた。「安全だという国の言い分を信じただけ。県が独自に専門家へ意見を求めるなどの手続きを踏むべきだった」と疑問を呈した。

 村岡知事に容認しないよう求めていた、県労連などでつくる「安保廃棄・岩国基地撤去県実行委員会」の石田高士実行委員長(57)も「県議会でもっと議論を尽くすべきだった。判断があまりにも早過ぎる」と批判した。

 過去に米軍機の墜落事故が起きている周防大島町でも不安の声が聞かれた。同町日前の河井弘志さん(88)は「オスプレイは墜落の危険性が高く通常のヘリコプターより騒音が大きい。考え直してもらいたい」と求める。

 理解を示す意見もある。岩国市内で紳士服店を経営する藤田信雄さん(61)は「最近は基地関係者で地元の飲食店や商店は支えられている。手放しで歓迎ではないが、国防のためにも受け入れはやむを得ない」と受け止めた。(長久豪佑、川村奈菜、川井直哉、鈴木愛理)

「改善なされていると承知」知事

 村岡嗣政知事は29日、米軍岩国基地(岩国市)に海軍の輸送機オスプレイなどが配備される計画の容認を表明し、県庁で報道陣の取材に応じた。やりとりの要旨は次の通り。(藤田龍治)

  ―オスプレイは昨年11月に鹿児島県・屋久島沖で墜落事故が起きました。危険性をどう捉えますか。
 事故の原因を把握した上で改善がなされており、教育訓練も改善しながら行われると承知し、一定の理解をする。国もしっかりと責任を持ち、安全性の確保について取り組んでほしい。

  ―結論を出したのはいつの時点ですか。
 昨日(28日)の段階で全ての地元自治体の考え方が表明されたので、それを踏まえて判断した。

  ―7月に国から配備計画が伝達され、今日までに各自治体の結論が出そろうのは拙速という意見もあります。
 今回は機体の数が10機程度減り運用自体は大きく変わらないなど、周辺地域の生活環境に大きな影響を及ぼすものではないということを国の回答も踏まえて確認できた。市町でも判断された。

  ―国に改めて地域振興策を求める考えはありますか。
 今回の件があるからということではなく、全体的に基地を抱えていることによってさまざまな負担や不安が常にある。それらに対してしっかりと地域振興という形で、国から姿勢を示してもらいたい。継続して求めていく。

(2024年8月30日朝刊掲載)

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