岩国基地オスプレイ配備計画 山口知事も容認表明 安全や騒音対策 国に要請
24年8月30日
米軍岩国基地(岩国市)に海軍の輸送機オスプレイなどが年内に配備される計画について、山口県の村岡嗣政知事は29日、「基地周辺住民の生活環境に大きな影響を与えるものではなく、地元市町の見解を踏まえ私としては理解する」と容認する意向を表明した。国に安全や騒音対策を強く求める考えも示した。
(藤田龍治)
オスプレイは空母艦載機のC2輸送機からの機種更新として配備される。併せて艦載機の戦闘機の一部がステルス戦闘機F35Cと交代する。海軍のオスプレイとF35Cはいずれも国内で初の配備となる。
配備計画を巡っては、国が7月に県と地元の岩国市、近隣の和木町、周防大島町に伝達した。県と3市町は機数や安全性などを文書で質問。国が今月20日に「安全性に問題はない」「騒音は現在より広がらない」などと回答した。県と3市町は回答を基に「基地の周辺住民の生活環境に大きな影響を与えるものではない」との検証結果をまとめ、3市町の首長は28日までに容認の意向を表明していた。
県庁で報道陣の取材に応じた村岡知事は、国の回答や検証結果も踏まえ「機体の数が10機程度減り運用自体はこれまでと大きく変わらない。周辺環境への影響は大きく出ることはないだろうと確認できた」と述べた。
村岡知事の表明後、県は中国四国防衛局に県と3市町の意向を連絡。併せて騒音の軽減措置に可能な限り取り組むことや、新たな情報が得られたら速やかに提供することなどを要請した。
米軍岩国基地へのオスプレイなどの配備計画は、機数や時期が明らかにされていないだけでなく、どこを飛ぶかなど不明な点は少なくない。
オスプレイは空母艦載機のC2輸送機の代わりに配備される。艦載機は例年、10~12月に洋上から岩国基地へ帰還する。半年ほど基地を拠点に訓練などをし、翌年春に洋上へ戻ってゆく。
岩国基地の所属機が訓練する空域は山陰沖、四国沖などとされる。オスプレイなどが訓練する場所や標準的な飛行ルートについて、国は岩国市などの質問に「平素の活動に大きな変更はない」と回答したものの、具体的には示さなかった。防衛省は中国新聞の取材に「米軍の運用」を理由に回答を避けた。
岩国基地の所属機が訓練場所へ移動する詳細な飛行ルートもこれまで明らかになっていない。それでも岩国市や山口県は「住民の生活に大きな影響はない」と判断した。
根拠の一つに挙げるのが、市や県、基地などでつくる岩国日米協議会の確認事項だ。「安全上許す限り工場および市街地の上空を飛行しない」と記述がある。国は「確認事項を維持すると米側から説明を受けた」とし、市基地政策課は「今後も尊重してくれる」と理解を示した。
だが、市などの判断に一部の市民から「国や米側の説明を丸のみしている」と批判の声も上がっている。
国は配備する機数についても明らかにしていない。市は国の説明からC2輸送機の現行の「約2機」より若干増えると想定している。配備時期についても国は具体的なスケジュールに言及していない。
オスプレイは、今秋にも空母ジョージ・ワシントンが横須賀基地(神奈川県)に入港するのに合わせ、同じく機種更新されるステルス戦闘機F35Cとともに岩国基地に配備される。
軍事評論家の稲垣治氏は、オスプレイやF35Cの機種更新を米軍の南西防衛強化の一環でもあるとみる。「いずれの機種も岩国基地に慣れるために訓練が活発化するのではないか。実戦のための訓練であり、海上だけを飛ぶとは限らない」と指摘する。(川村奈菜)
(2024年8月30日朝刊掲載)
オスプレイは空母艦載機のC2輸送機からの機種更新として配備される。併せて艦載機の戦闘機の一部がステルス戦闘機F35Cと交代する。海軍のオスプレイとF35Cはいずれも国内で初の配備となる。
配備計画を巡っては、国が7月に県と地元の岩国市、近隣の和木町、周防大島町に伝達した。県と3市町は機数や安全性などを文書で質問。国が今月20日に「安全性に問題はない」「騒音は現在より広がらない」などと回答した。県と3市町は回答を基に「基地の周辺住民の生活環境に大きな影響を与えるものではない」との検証結果をまとめ、3市町の首長は28日までに容認の意向を表明していた。
県庁で報道陣の取材に応じた村岡知事は、国の回答や検証結果も踏まえ「機体の数が10機程度減り運用自体はこれまでと大きく変わらない。周辺環境への影響は大きく出ることはないだろうと確認できた」と述べた。
村岡知事の表明後、県は中国四国防衛局に県と3市町の意向を連絡。併せて騒音の軽減措置に可能な限り取り組むことや、新たな情報が得られたら速やかに提供することなどを要請した。
機数・時期・ルート 不明点多く 専門家「海上だけを飛ぶとは限らない」
米軍岩国基地へのオスプレイなどの配備計画は、機数や時期が明らかにされていないだけでなく、どこを飛ぶかなど不明な点は少なくない。
オスプレイは空母艦載機のC2輸送機の代わりに配備される。艦載機は例年、10~12月に洋上から岩国基地へ帰還する。半年ほど基地を拠点に訓練などをし、翌年春に洋上へ戻ってゆく。
岩国基地の所属機が訓練する空域は山陰沖、四国沖などとされる。オスプレイなどが訓練する場所や標準的な飛行ルートについて、国は岩国市などの質問に「平素の活動に大きな変更はない」と回答したものの、具体的には示さなかった。防衛省は中国新聞の取材に「米軍の運用」を理由に回答を避けた。
岩国基地の所属機が訓練場所へ移動する詳細な飛行ルートもこれまで明らかになっていない。それでも岩国市や山口県は「住民の生活に大きな影響はない」と判断した。
根拠の一つに挙げるのが、市や県、基地などでつくる岩国日米協議会の確認事項だ。「安全上許す限り工場および市街地の上空を飛行しない」と記述がある。国は「確認事項を維持すると米側から説明を受けた」とし、市基地政策課は「今後も尊重してくれる」と理解を示した。
だが、市などの判断に一部の市民から「国や米側の説明を丸のみしている」と批判の声も上がっている。
国は配備する機数についても明らかにしていない。市は国の説明からC2輸送機の現行の「約2機」より若干増えると想定している。配備時期についても国は具体的なスケジュールに言及していない。
オスプレイは、今秋にも空母ジョージ・ワシントンが横須賀基地(神奈川県)に入港するのに合わせ、同じく機種更新されるステルス戦闘機F35Cとともに岩国基地に配備される。
軍事評論家の稲垣治氏は、オスプレイやF35Cの機種更新を米軍の南西防衛強化の一環でもあるとみる。「いずれの機種も岩国基地に慣れるために訓練が活発化するのではないか。実戦のための訓練であり、海上だけを飛ぶとは限らない」と指摘する。(川村奈菜)
(2024年8月30日朝刊掲載)