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社説・コラム

『想』 友広和照(ともひろかずてる) ひろしまハウス

 カンボジアの首都プノンペンにある「ひろしまハウス」は、1994年に開催された広島アジア大会が起点となり、原爆から復興した広島と内戦や虐殺からの復興を目指すカンボジアとの平和への架け橋として、多くの寄付とボランティアにより10年の歳月をかけて2006年に完成した建物です。

 昨年、「ひろしまハウス」の現地運営を支える「NPO法人カンボジアひろしまハウス協会」の理事長を元広島市長の平岡敬氏から引き継ぎました。ここまでつないで来られた多くの方々の気持ちと活動を受け継ぐには力不足ではありますが、頂いたご縁を大切に続けていきたいと思います。また会社としても、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みの一環として「国際協力活動」の位置づけで関わっていきます。

 「ひろしまハウス」との出合いは、カンボジアでプロサッカー選手をしていた長男が、ボランティアで施設の子どもたちと交流を深め、現地マネジャーとなったことがきっかけです。私もその流れの中で日本側での協会運営に携わるようになり、16年ころから支援を続けてきました。

 カンボジアでは、内戦やポル・ポト政権による虐殺により、多くの国民が命を失いました。こうした歴史の爪痕は大きく、内戦で埋められた地雷の除去が今も続いています。広島の原爆被害とともに、世界平和に向けて忘れてはならない体験をしてきた国なのです。

 現在のカンボジアは、日本や中国、米国などの支援を受けながら急速に経済発展しているものの、貧困層への手当ては行き届いていません。特に義務教育さえもままならない子どもたちが多く取り残されています。

 「ひろしまハウス」では貧しい暮らしを送っている子どもたちに給食と教育を提供し、さまざまな体験を通じて将来の夢や職業を具体化し実現する支援を行っています。いずれはこの施設で学んだ子どもたちが大人になって、自分たちの力で運営できるようになることが目標です。(友鉄工業社長)

(2024年9月6日朝刊セレクト掲載)

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