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朝凪(あさなぎ) 平和の祈り 結ばれた縁

 夏は、ある被爆者を取材できなかった心残りがよみがえる。福山市の彦坂昭子さん(2020年に93歳で死去)。彼女の証言を基にした紙芝居の平和教育プログラムについて福山市立大の大庭三枝准教授を取材したとき、彦坂さんも訪ねるはずだった。体調を崩されてかなわず、1年たたぬうちに亡くなった。

 あれから4年。市立大に、彦坂さんの母校である進徳高等女学校(現進徳女子高)の後輩がいると大庭さんから聞いた。教育学部3年寺田朱里さん(20)で、大学を選んだ理由の一つは本紙の記事だった。

 彦坂さんは今の広島市中区の勤め先で被爆した。「若い人に伝えて」と繰り返していたと聞く。寺田さんは「縁を感じ平和教育への使命感が湧いた」と話す。新聞を通じたつながりに、心残りが少し癒やされる。(編集センター・吉原健太郎)

(2024年9月11日朝刊掲載)

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