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社説・コラム

『想』 叶真幹(かのうまさき) 被爆体験を伝え合う

 被爆体験をどのようにして次の世代に受け継いでいくのかが課題となって久しい。広島市による被爆体験伝承者の養成などもその一つだ。

 私たちは、3年前から「伝え合おうヒロシマ・ナガサキ~広島の会」という催しを開催している。被爆体験記の朗読を中心にさまざまな世代がさまざまな方法で伝え合っていこうという試みだ。長崎からも被爆体験記の朗読活動を行っているボランティアの参加があり、広島ではあまり聞くことのできない長崎の被爆体験を聞くことができる貴重な機会ともなっている。

 高校生から高齢者まで多様な世代が朗読や演奏など多様な手段で被爆体験を伝え合う場となっており、来場者からは高い評価のご意見を頂いている。

 この催しのベースとなっているのは、私がかつて勤務していた国立広島原爆死没者追悼平和祈念館で実施している「被爆体験記の朗読会」だ。アナウンサーや演劇等の経験のあるまさに朗読のプロといった人たちが被爆体験記を朗読する。定期朗読会だけでなく、出前で派遣する仕組みも整えられている。

 また、この朗読活動は日本語だけでなく英語でも実施しており、海外からの来館者に向けた定期朗読会が実施されている。

 被爆体験記の朗読を聴く際にはテキストの文字を目で追うのではなく、耳から伝わる情報を頭の中に描き、五感を使い想像力を働かせて、その状況を自らのものとしていくことが大切だと考えている。朗読者も当時の状況の情報を集めて理解した上で読むことを心がけている。被爆体験のない私たち世代に求められているのは「想像力」に尽きるのではないだろうか。

 「伝え合おう会」では、平和の曲の合唱や演奏、高校放送部が制作した平和をテーマにした作品の上映や大学生、高校生による朗読など、多彩なプログラムを予定している。師走の土曜日、平和について考える時間を過ごしてみませんか。12月7日午後1時から原爆資料館地下1階のメモリアルホールでお会いしましょう。(みんなで伝え合おうヒロシマ・ナガサキ代表)

(2024年9月11日朝刊セレクト掲載)

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