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戦争の記憶 若者が継承10年 「ふくやまピース・ラボ」受講計90人に 本年度12人 「傷は癒えないと実感」

 若者が福山空襲や原爆被害について学ぶ福山市の連続講座「ふくやまピース・ラボ」が10年目を迎えた。本年度を含め中高生や大学生たち約90人が受講し、市内の戦争遺構を巡る催しの案内人なども務める。終戦80年を前に、参加者は「戦争の記憶や平和への思いを同世代にも広げたい」としている。(原未緒)

 今月上旬、受講する中高生5人が同市丸之内を歩き、福山城公園の防空壕(ごう)跡や備後護国神社の慰霊碑など7カ所を見て回った。11月にガイド役を担う「ピースウォーク」の準備の一環だ。

 メレヨン島の戦没者慰霊碑の前では、市人権平和資料館の三島重義さん(68)が戦況の悪化で島への補給が断たれ、兵士約5200人の多くが飢えや病気で命を落としたと解説した。生徒たちは険しい表情で聞き入った。

 講座は2015年度にスタート。参加者は福山空襲の体験者や被爆者から証言を聞き取り、慰霊碑を巡るフィールドワークなどで戦災の実態を1年間学ぶ。ピースウォークのほか、アート制作などを通じて平和を発信する。

 昨年度までに81人が学び、うち5人が国内外で核兵器廃絶を訴える「高校生平和大使」に選ばれた。10期目となる本年度は福山、尾道、井原市の中学から大学生までの12人が受講する。

 福山暁の星女子高1年吉田玲衣奈(れいな)さん(16)と同女子中2年の絵玲奈さん(14)は姉妹で参加。玲衣奈さんは「地元であった空襲や戦争の記憶を私たちが伝えていかないと。若い世代も参加しやすいオンラインツアーなども考えたい」と思い描く。

 絵玲奈さんは「泣きながら語る被爆者の話を聞き、何十年たっても戦争の傷は癒えないと実感した。今後も証言者と向き合い、思いを伝え継ぎたい」と決意を新たにしている。

(2024年9月17日朝刊掲載)

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