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連載・特集

緑地帯 菅亮平 被爆再現人形とフィクション①

 10月14日まで、埼玉県東松山市の原爆の図丸木美術館で個展「Based on a True Story」を開催している。この展覧会では、2020年の原爆ドームの保存工事と、原爆資料館で17年まで26年間展示されていた被爆再現人形を題材とした作品を発表している。

 展覧会タイトルは「実話に基づいて」の意であり、映画やドラマ、本の冒頭で記載される文言から引用した。この言葉は、視聴者や読者に対してその作品への共感を喚起する効果がある一方で、どの程度の事実に基づいていて、どの程度のフィクションを含んでいるのかは曖昧さを含んでいる。

 1983年に日本で生まれ育った私にとって、戦争とは過去を意味するものだった。幼少期を振り返って戦争を知るきっかけとして記憶に残るのは、高畑勲のアニメ映画「火垂るの墓」であり、中沢啓治の漫画「はだしのゲン」である。物語の中で描かれる自身と同年代の主人公が、戦争というあらがい難い過酷な現実を生きるその姿に胸を打たれた。

 爆撃によって都市が瞬く間に廃虚になることも、人間が生きたまま焼かれることも、物語の中のイメージとして知ったことだった。戦争に限らず、フィクションを介して現実に触れること、それは私にとってごく自然な世界認識の在り方であった。 (かん・りょうへい 美術作家、広島市立大講師=広島市)

(2024年9月19日朝刊掲載)

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