核なき世界「歩み止めぬ」 未来サミット 首相 国連本部で演説
24年9月24日
岸田文雄首相は22日(日本時間23日)、米ニューヨークの国連本部であった地球規模の課題や国連改革を議論する未来サミットで演説した。ライフワークとする「核兵器のない世界」の実現に向け「道のりがいかに厳しいものであったとしても、歩みを止めるわけにはいかない」と訴えた。安全保障理事会の改革の必要性も唱え、理事国の拡大を求めた。(ニューヨーク発 宮野史康)
首相は国連総会の議場で、5分間話した。演台で指を組み、「さまざまな価値観を有する国々が共に行動する際、根本的な指針が必要だ」と語り始めた。国際会議で繰り返し主張している「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を重視する考えなどを披露した。
核軍縮・不拡散では「情勢は一層厳しさを増している」と断言。核兵器の原料生産を禁じる兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の実現を目指す友好国(フレンズ)会合を紹介し、「現実的かつ実践的な取り組みを推進する」と述べた。
安保理改革は、国連加盟国の大多数が、常任、非常任理事国を増やすよう訴えていると強調。来年の国連創設80年に言及し「具体的な行動を進めるべきだ」と改革を促した。改革後の安保理でも「日本は国際平和・安全の実現と維持に貢献する」と誓った。
他にも、貧困や気候変動といった危機への対応には国際協力が不可欠と指摘。人への投資として「日本は近く、ジェンダー分野をけん引する次世代の育成プログラムを立ち上げる」と表明した。
この日は国連のグテレス事務総長と国連本部で約20分間、会談した。2人は、国連を中核とした多国間主義の重要性を確認した。首相はこの場でも「核なき世界に向けた歩みを止めるわけにはいかない」と発言。国連安保理の理事国を増やす重要性を指摘し、邦人職員の増加への配慮を依頼した。
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首相の言葉響いたか
岸田文雄首相の訪米に同行している。22日(日本時間23日)に首相が出席した国連未来サミットは、同日採択した行動指針「未来のための協定」に「核兵器のない世界」への前進を盛り込んだ。理念にとどまる面もあるが、米ロ英仏中を含む国連加盟国が総意で合意した点に希望を感じた。
今回の協定は、2030年に期限を迎える国連の持続可能な開発目標(SDGs)の代わりとなる目標づくりに影響を与えるだろう。世界的なSDGsの浸透ぶりを考えると、協定が核廃絶に触れた意義は大きい。
ただ、貧困や気候変動を主としたSDGsの後継目標が核廃絶にも踏み込むには核保有国の難色も想定される。首相が演説で強調した「歩みを止めるわけにはいかない」との言葉が加盟国にどう響いたか。国連の動きに注目したい。(ニューヨーク宮野史康)
(2024年9月24日朝刊掲載)
首相は国連総会の議場で、5分間話した。演台で指を組み、「さまざまな価値観を有する国々が共に行動する際、根本的な指針が必要だ」と語り始めた。国際会議で繰り返し主張している「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を重視する考えなどを披露した。
核軍縮・不拡散では「情勢は一層厳しさを増している」と断言。核兵器の原料生産を禁じる兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の実現を目指す友好国(フレンズ)会合を紹介し、「現実的かつ実践的な取り組みを推進する」と述べた。
安保理改革は、国連加盟国の大多数が、常任、非常任理事国を増やすよう訴えていると強調。来年の国連創設80年に言及し「具体的な行動を進めるべきだ」と改革を促した。改革後の安保理でも「日本は国際平和・安全の実現と維持に貢献する」と誓った。
他にも、貧困や気候変動といった危機への対応には国際協力が不可欠と指摘。人への投資として「日本は近く、ジェンダー分野をけん引する次世代の育成プログラムを立ち上げる」と表明した。
この日は国連のグテレス事務総長と国連本部で約20分間、会談した。2人は、国連を中核とした多国間主義の重要性を確認した。首相はこの場でも「核なき世界に向けた歩みを止めるわけにはいかない」と発言。国連安保理の理事国を増やす重要性を指摘し、邦人職員の増加への配慮を依頼した。
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記者のつぶやき
首相の言葉響いたか
岸田文雄首相の訪米に同行している。22日(日本時間23日)に首相が出席した国連未来サミットは、同日採択した行動指針「未来のための協定」に「核兵器のない世界」への前進を盛り込んだ。理念にとどまる面もあるが、米ロ英仏中を含む国連加盟国が総意で合意した点に希望を感じた。
今回の協定は、2030年に期限を迎える国連の持続可能な開発目標(SDGs)の代わりとなる目標づくりに影響を与えるだろう。世界的なSDGsの浸透ぶりを考えると、協定が核廃絶に触れた意義は大きい。
ただ、貧困や気候変動を主としたSDGsの後継目標が核廃絶にも踏み込むには核保有国の難色も想定される。首相が演説で強調した「歩みを止めるわけにはいかない」との言葉が加盟国にどう響いたか。国連の動きに注目したい。(ニューヨーク宮野史康)
(2024年9月24日朝刊掲載)