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社説・コラム

社説 立民新代表に野田氏 政権担うビジョンを示せ

 野党第1党の立憲民主党はきのうの臨時党大会で野田佳彦元首相を新代表に選んだ。

 早期の実施も想定される衆院選で党の「顔」となる。野田氏は決選投票で枝野幸男前代表を退けると早速、「本気で政権を取りにいく」と述べ、すぐに臨戦態勢に入ることを強調した。自民党に代わって政権を担う能力があることを、有権者に示していく必要がある。

 政権交代を求める声が高まっているのは確かだろう。野田氏は「千載一遇のチャンス」と語っていた。ただ裏金問題など自民党による敵失であることを忘れてはなるまい。自民党には大きな逆風であっても、立憲民主党の追い風はそう強くない。

 共同通信の8月中旬の電話世論調査では、政党支持率はトップの自民が36・7%。立憲民主は12・3%だった。

 野田氏は衆院選で、自民党に失望した保守層を含めて取り込みたい考えを示す。しかし単独での政権獲得は現実的には難しい。野党がまとまれないことで、自民1強を許した経緯がある。与党を過半数割れに追い込むことを目標とし、「野党勢力の最大化」に向けた調整が重要になる。

 野田氏は共産党と「一緒に政権は担えない」と明言したが、日本維新の会や国民民主党とも内政や外交、安全保障分野の主要政策は必ずしも一致していない。違いを乗り越えて、どんな連携ができるのか手腕が問われる。

 代表選は、刷新感より経験や安定感を重視する結果になった。裏を返せば新たな人材の不足にも見える。決選投票に残った2人は新味に乏しい。当選1回の吉田晴美氏が立候補にこぎ着けたが、推薦人が別の候補を公然と推す事態になった。最も若い泉健太氏は現代表にもかかわらず得票ポイントは3位にとどまった。自民党への対抗軸として信任が得られなかったのだろう。

 野田氏の重点施策は「分厚い中間層の復活」である。格差の拡大は先進国に共通する課題であり、重要なテーマに違いない。岸田文雄首相が「中間層の拡大」を訴えるなど、自民党を含め、いくつかの政権がフレーズを変えながら打ち出してきた。どう実現するかが大事だ。

 野党第1党として忘れてはならないのは、政治とカネの問題の追及である。自民党の裏金議員は説明責任を果たさず、対策も徹底されないままになっている。政治資金規正法の再改正にも踏み込むべきだ。

 信頼の回復が必要であることは、立憲民主党にも言える。多くの国民は、旧民主党政権時代の失敗と混乱を覚えている。野党になってからも、自民党に対する「反対ばかり」の姿勢について、若い世代を中心に厳しい目が向けられた。具体的な代案に国民は期待している。

 野田氏には、現実感を持って野党をまとめる強いリーダーになれるかどうかが問われている。弱い立場の人を支える立憲民主党らしい政策を打ち出し、明確な未来のビジョンを示してほしい。

(2024年9月24日朝刊掲載)

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