緑地帯 菅亮平 被爆再現人形とフィクション④
24年9月24日
2019年の原爆資料館の本館・東館のリニューアル計画に際して、10年に策定された「広島平和記念資料館展示整備等基本計画」において、展示の内容と方法の大幅な見直しがなされる。そこでは、存命の原爆被害の体験者の高齢化・減少化が進む状況を見据えて、実物資料を重視する観点から、被爆後のがれきとなった広島の街を再現したジオラマと被爆再現人形の撤去の方針が示された。13年以降、本件は市民や有識者を中心に賛否両論の議論に発展した。
広島市は、ジオラマと人形の撤去を含むリニューアルの方針について、「原爆被害の凄惨(せいさん)な情景はこんなものではなかった」という意見を踏まえ、個々人の主観や価値観に依存しない遺品や写真、被爆体験者による絵、証言などを通して、現実に起こった事実として被爆の実相を来場者に伝えることを趣旨とした。
これらの説明に対して、被爆再現人形の撤去反対派は積極的に撤去しなければいけない理由を疑問視しながら、人形展示が原子爆弾の恐ろしさを伝えてきた歴史的な役割を重視する意見を展開した。
最終的に撤去の決定は覆らず、17年にジオラマと人形は展示室から姿を消したが、人形本体は廃棄されず同館で保存されることになった。
そして、広島サミットの喧騒(けんそう)も落ち着いた24年に私が保管庫の扉を開けるその時まで、人目に触れることはなかった。(美術作家、広島市立大講師=広島市)
(2024年9月24日朝刊掲載)
広島市は、ジオラマと人形の撤去を含むリニューアルの方針について、「原爆被害の凄惨(せいさん)な情景はこんなものではなかった」という意見を踏まえ、個々人の主観や価値観に依存しない遺品や写真、被爆体験者による絵、証言などを通して、現実に起こった事実として被爆の実相を来場者に伝えることを趣旨とした。
これらの説明に対して、被爆再現人形の撤去反対派は積極的に撤去しなければいけない理由を疑問視しながら、人形展示が原子爆弾の恐ろしさを伝えてきた歴史的な役割を重視する意見を展開した。
最終的に撤去の決定は覆らず、17年にジオラマと人形は展示室から姿を消したが、人形本体は廃棄されず同館で保存されることになった。
そして、広島サミットの喧騒(けんそう)も落ち着いた24年に私が保管庫の扉を開けるその時まで、人目に触れることはなかった。(美術作家、広島市立大講師=広島市)
(2024年9月24日朝刊掲載)