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社説・コラム

『記者のつぶやき』 黄金の日米関係の一方で

 着陸からわずか1時間半。その早さに驚いた。岸田文雄首相は米国に着くと真っ先にバイデン大統領の私邸に駆け込んだ。国内では珍しいほどの笑顔で。自国の利益を追求する外交での戦略的な振る舞いと感じた。

 ある外交筋によると、今の日米関係は「黄金時代」。首相は「応分の負担」を求める米国に呼応するように安全保障政策を転換。反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有、防衛費の倍増へと進む。政府関係者は今回の訪米を「同盟国、同志国と連携を深めてきた岸田外交の仕上げ」と胸を張る。

 一方、首相はこの3年間、中国の地を踏むことはなかった。軍備を増強し、海洋進出を活発化させる中国に日米同盟の強化はどう映っているだろうか。台湾有事も懸念される中、日中トップの間に誤解や不信が生じてはいまいかと不安にもなる訪米取材の始まりだった。(ウィルミントン宮野史康)

(2024年9月23日朝刊掲載)

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