核軍縮トップ外交 「岸田流」最後まで 外遊終え 新政権を注視へ
24年9月26日
岸田文雄首相は在任中最後の海外訪問を終えた。核兵器を巡る国際情勢が厳しさを増す中、核軍縮を進めるためのトップ外交に最後まで注力した。掲げ続けた「核兵器のない世界」の実現に退任後も力を尽くす構えを示しており、次の政権にどれだけ影響を及ぼせるかが焦点になる。
<br><br>
「現実的に取り組みを前に進めることが大事だという点を肝に銘じ、これからも努力を続ける」。首相は訪問先の米ニューヨークで23日、核廃絶に引き続き尽くすと報道陣に強調した。「現実的」というフレーズに、核保有国を巻き込んだ核軍縮を唱え続けてきた首相らしさがにじんだ。
<br><br>
今回の訪米で重視したのが23日に開いた、核兵器の原料生産を禁じる兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始に向けたハイレベル友好国(フレンズ)会合だった。30年余り前にクリントン米元大統領が提唱したものの、交渉すら始まらない中での開催。世界の政治指導者の関心を再び高める狙いがあった。
<br><br>
22日の国連未来サミットの演説でも「核なき世界」に触れ、「歩みを止めるわけにはいかない」と力を込めた。21日にはバイデン大統領の私邸であった日米首脳会談で、その流れを日米が主導すべきだと働きかけた。
<br><br>
ただ同じ会談では、核兵器を含む戦力で米国が日本防衛に関わる「拡大抑止」を巡り、4月の共同声明も再確認した。核廃絶を唱えながら、米国の核抑止に頼る―。被爆者の願う核廃絶のアプローチとの溝は最後まで埋まらなかった。
<br><br>
首相が熱を入れた核軍縮外交は、まもなく選ばれる自民党新総裁に委ねられる。これまでの論戦で核軍縮を巡る議論は深まっておらず、非核三原則の見直しや「核共有」を唱える候補さえいる。23日、米国で自身の投票先の判断基準を問われた首相は報道陣に語った。「私の内閣で進めてきた政策を引き継ぎ、発展させていける方は誰なのか。しっかりと見ていきたい」(宮野史康)
<br><br>
(2024年9月26日朝刊掲載)