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社説・コラム

天風録 『死んだ兵士の残したものは』

 60年ほど前、ベトナムが米国による大規模な空爆に遭う。東京で催された無党派の平和集会が、世に送り出した反戦歌がある。谷川俊太郎さんが詞を書いた「死んだ男の残したものは」(武満徹作曲)である▲こんな一節がある。〈死んだ兵士の残したものは こわれた銃とゆがんだ地球〉。自衛や正義の名の下に繰り返される戦争で、罪のない命が奪われる。そして、自然環境も。私たちの地球を私たち人間が傷つけている▲今また、血も涙もない空爆をイスラエルがレバノンに加えている。一般討論が始まった国連総会の冒頭演説で、グテレス事務総長がくぎを刺した。レバノンを「もう一つのガザにするわけにはいかない」と▲国連総会のある9月下旬には連日、国際デーが並ぶ。21日の国際平和デー、26日は核兵器の全面的廃絶のための国際デー…。掃除を通じて地球環境を考える世界クリーンアップ・デーというのもある。地球を一番散らかすものは戦争にほかならない▲戦乱で残るのは武器の残骸と荒廃した地球だけ―とする例の詞はこう続く。〈他には何も残せなかった 平和ひとつ残せなかった〉。何かひとつでも残せる者は生きている私たち以外にない。

(2024年9月26日朝刊掲載)

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