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総裁選 非核三原則見直し論なぜ 「持ち込ませず」是非 争点化の候補も

 核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」。国是の非核三原則を巡り、自民党総裁選で「持ち込ませず」の見直しを訴える候補が相次いでいる。被爆地広島、長崎の思いと反する声がなぜ出るのか。(編集委員室 下久保聖司、田中美千子)。

 自民党総裁選の投開票は27日に迫る。論戦で非核三原則の見直しをとりわけ強く訴えているのは、かねて「タカ派」で知られる候補者たちだ。

 候補者9人のうち、非核三原則の争点化に動いたのは、保守層の支持が厚い高市早苗経済安全保障担当相だった。今月9日のテレビ番組で「『持ち込ませず』は見直してもいいのではないか」と訴えた。核を積んだ米艦船の領海通過を有事でも拒めば、「核抑止力が全く機能しない」と、以前から主張している。

 翌10日、石破茂元幹事長が政策発表記者会見で呼応する。「高市氏の考えは一部共有するものがある」とし、別のメディア取材で「核共有」についての持論も展開した。

 日米連携を密にしておかないと「核の傘」を差してもらえないと主張。「持ち込ませず」の原則を形骸化する核共有について「三原則に触れるものでは基本的にはない。この話はもう少し真面目にしなきゃいかん。核攻撃を受けた国だけに」と述べた。

 河野太郎デジタル相も16日の討論会で核共有に関して「実体的な議論」をする日米協議が必要だと指摘。海洋進出を続ける中国へのけん制として原子力潜水艦の配備にも前向きな姿勢を示す。

 ただ、原潜配備を巡っては専守防衛や原子力の平和利用など従来の政府方針との整合性が課題となる。「軽武装・経済重視」を理念とした宏池会(旧岸田派)出身の林芳正官房長官は5日の会見で「原子力基本法の現行解釈に従えば、わが国が原潜を保有することは難しい」と述べている。

ght:bold;">佐藤栄作氏 衆院決議で「国是」に

 非核三原則は1971年11月に「国是」となった。時の首相は佐藤栄作氏。4年前に唱えた三原則を衆院決議まで持っていった。

 沖縄返還とともにノーベル平和賞につながる功績だが、佐藤氏は65年に「(前年に初の核実験をした)中国が核兵器を持つならば日本も持つべきだ」と唱えていた。

 さかのぼれば佐藤氏の実兄、岸信介氏も首相在任中の57年5月、「自衛の範囲を超えない限り核兵器を保有しても憲法違反ではない」と主張。ただ、1週間ほどで「政策としては持つ意思がない」と発言を修正する。

 後任首相の池田勇人氏は63年、「核弾頭を持った潜水艦の寄港を認めない」と述べた。後に三原則に入る「持ち込ませず」だが、核を積んだ艦船の通過や寄港を黙認する密約が60年に日米間で結ばれていたことが近年明らかになった。

 それでも三原則は被爆国の国是として守られてきたが、核超大国ロシアがウクライナに侵攻した2022年、安倍晋三元首相が「核共有」の議論を提起した。普段から米国の核兵器を同盟国に配備し、有事には同盟国が使うことも想定した仕組みだ。

 被爆地広島選出の岸田文雄首相はこれを退け、自民党も党内論議で核共有は「日本ではなじまない」と結論付け、三原則の見直しを否定した。

(2024年9月26日朝刊掲載)

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