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金権政治からの脱却期待 中国地方の有権者 要望や注文 経済の立て直しも

 自民党新総裁に石破茂氏が決まった27日、中国地方の有権者からは「政治とカネ」問題や人口減への対応、安全保障などを巡り、期待や注文が相次いだ。早期の衆院解散・総選挙が取り沙汰される中、野党の奮起を求める声もあった。

 自民党派閥の裏金事件に厳しい目が注がれた中での総裁選。呉市の広島国際大1年羽納三平さん(19)は「石破さんはクリーンなイメージ。旧安倍派の色が強い高市さんより金権政治から脱却できそう」と期待した。

 4月の衆院島根1区補選では裏金事件が響いて自民党候補が敗北。今回の総裁選では中国地方で唯一、松江市で候補演説会が開かれた。同市の無職石塚泰三さん(77)は「裏金問題に真っ先に取り組んで」と求めた。

 衆院鳥取1区選出で初代の地方創生担当相も務めた石破氏に、地方活性化への期待も集まった。三次市の農業牧原利浩さん(85)は「山あいの集落は消滅の危機にある。生産地を守るため、今までにない手だてを」。広島市中区の自営業森本奈杏さん(26)は「広島も若者を中心に人口流出している。地方でもやりたいことができる国に」と望む。

 円安や物価高が直撃する暮らしや経済の立て直しを求める声も。福山市の運送会社社長目黒由成さん(50)は「人件費も急上昇している。早く国内全体の景気を良くしてほしい」と注文する。

 安全保障分野の論客として知られる石破氏は、米軍の法的な特権を認めた「日米地位協定」の見直しを掲げる。米軍岩国基地(岩国市)の滑走路の西約3キロに住む同市の無職野村和征さん(84)は「今は米軍の言いなり。言うべきことは言い、米軍頼みの政治から脱却を」と強調した。

 被爆地からは、米国の核兵器を共同運用する「核共有」の議論を促す石破氏の姿勢に懸念の声も上がる。南区の被爆者内藤慎吾さん(85)は「核兵器は廃絶しなきゃいかんという被爆地の考えとは根本的に相いれない」と指摘。「ただでさえ防衛費の増額が続いている。原爆犠牲者の上に今の平和があることを忘れないで」と力を込めた。

 23日には立憲民主党の新代表に野田佳彦元首相が選ばれ、政権交代に強い決意を表明している。安佐南区の西田勝紀さん(83)は「野党は実現可能な公約を掲げ、もっと力をつけて与野党で切磋琢磨(せっさたくま)を」と促した。

核禁条約「オブザーバーに」 米との「核共有」言及 懸念も 被爆者たち

 被爆地広島の被爆者や核兵器廃絶へ活動する若者たちは27日、自民党の新総裁に選ばれた石破茂氏の核を巡るこれまでの言動を踏まえ、注視していく考えを示した。

 石破氏は核兵器禁止条約への署名、批准に関して中国新聞などの取材に答えた総裁選の候補者8人のうち唯一、核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加を一つの「選択肢」とした。

 広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(82)は米国の「核の傘」に頼りながらもオブザーバー参加したドイツを引き合いに、「日本政府も動いてほしい」と期待。来年3月にある次回会議での実現を願った。

 一方、石破氏は総裁選の討論会で米国の核兵器を日本で運用する「核共有」について言及。「非核三原則に触れるものではない」と述べ、議論の必要性を訴えた。

 核兵器廃絶を訴える一般社団法人かたわら(横浜市)の高橋悠太代表理事(24)=福山市出身=は「核兵器廃絶と非戦を掲げる広島のメッセージと相反する。東アジアの安全保障環境を考えると、攻撃的なメッセージになる」と懸念。1985年に米軍の核搭載船の寄港を拒否したニュージーランドとの対話を求めた。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(79)は長崎原爆の「被爆体験者」を被爆者と早期に認定するよう要望。「被爆から80年近くたっているのに救済されない状況が続いている」と指導力発揮を望んだ。(山下美波)

(2024年9月28日朝刊掲載)

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