[ヒロシマドキュメント 1945年] 9月28日 爆心地近く 植物に異常
24年9月28日
1945年9月28日。理化学研究所の中山弘美さんは、爆心地近くの広島護国神社の周辺に生える草を調べていた。
現在のひろしまゲートパーク(広島市中区)の辺りは「斑(ふ)入リ畸形(きけい)多シ」。当時つけた調査日誌の28日付に現地の見取り図を描いて記録した。草のヒマは「計28本中11本斑入リ及畸型」。変異は自然状態でも生じるが、約4割に上るのは非常に高い比率だった。
中山さんは、理研で原子物理学者の仁科芳雄博士の研究室に所属。放射線を植物の種子や幼芽の成長点に照射すると異常個体が生じるのを観察した経験があった。照射により、特にふ入りの葉が高頻度で生じたという。
文部省学術研究会議の「原子爆弾災害調査研究特別委員会」の生物学の調査活動で、放射線の植物への影響を調べるため、21日に広島市入り。記録映画を製作する日本映画社(日映)の撮影班が同行した。
中山さんはふ入りの葉に注目したが、焼き尽くされた市中心部は、残っている植物自体が少なかった。ただ、爆心地から200メートルほどの護国神社周辺の一角に、火災の影響が少ない場所を見つけた。
そこのふ入りのヒマを「放射線によると思われる異常個体」(53年刊の「原子爆弾災害調査報告集」収録の中山さんの論文)とみた。被爆時に地上に出ていた部分は熱線で枯れたが、生き残って放射線を受けた地下部分が生育した結果と考えられるという。
中山さんの報告によれば、付近ではエビスグサも放射線によるとみられるふ入りの個体が見られた。一方で、ほかの多くの植物に同様の異常は確認できなかった。(編集委員・水川恭輔)
(2024年9月28日朝刊掲載)
現在のひろしまゲートパーク(広島市中区)の辺りは「斑(ふ)入リ畸形(きけい)多シ」。当時つけた調査日誌の28日付に現地の見取り図を描いて記録した。草のヒマは「計28本中11本斑入リ及畸型」。変異は自然状態でも生じるが、約4割に上るのは非常に高い比率だった。
中山さんは、理研で原子物理学者の仁科芳雄博士の研究室に所属。放射線を植物の種子や幼芽の成長点に照射すると異常個体が生じるのを観察した経験があった。照射により、特にふ入りの葉が高頻度で生じたという。
文部省学術研究会議の「原子爆弾災害調査研究特別委員会」の生物学の調査活動で、放射線の植物への影響を調べるため、21日に広島市入り。記録映画を製作する日本映画社(日映)の撮影班が同行した。
中山さんはふ入りの葉に注目したが、焼き尽くされた市中心部は、残っている植物自体が少なかった。ただ、爆心地から200メートルほどの護国神社周辺の一角に、火災の影響が少ない場所を見つけた。
そこのふ入りのヒマを「放射線によると思われる異常個体」(53年刊の「原子爆弾災害調査報告集」収録の中山さんの論文)とみた。被爆時に地上に出ていた部分は熱線で枯れたが、生き残って放射線を受けた地下部分が生育した結果と考えられるという。
中山さんの報告によれば、付近ではエビスグサも放射線によるとみられるふ入りの個体が見られた。一方で、ほかの多くの植物に同様の異常は確認できなかった。(編集委員・水川恭輔)
(2024年9月28日朝刊掲載)