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連載・特集

緑地帯 石原香絵 地域のフィルムは地域で守る②

 米国の専門学校を卒業した2001年、映画保存協会の前身となるグループを仲間と立ち上げ、草の根レベルの活動を始めた。幻の無声映画を発掘し、寄付を募って復元したり、地域や家庭に眠るホームムービーを持ち寄って上映したり。そうこうするうち、映画づくりを教える大学のコースで教えてみないかとお声がかかった。

 大学で非常勤講師の仕事を長く続けていると、次第にデジタル世代のメディア感覚がつかみ切れなくなった。程なくフィルムを使った制作実習もカリキュラムから消えてしまい、不安が募る。映画保存の大切さを伝えたいのに、映画がかつてフィルムで撮影され、上映されていたことに始まって、デジタル保存の話題まで網羅しようと欲張ると、時間がいくらあっても足りない。錆(さ)びついてきた知識をブラッシュアップすべく、大学院に進学してアーカイブズ学を専攻した。

 研究を始めてとりわけ注目するようになったことの一つに、地域のフィルムアーカイブの役割がある。国内では福岡市総合図書館、広島市映像文化ライブラリー、神戸映画資料館、京都府京都文化博物館、川崎市市民ミュージアム(移転に向けて休館中)、山形ドキュメンタリーフィルムライブラリーが相当する。なかでも「平和」や「原爆」をテーマに堅実なコレクションを築いてきた広島市映像文化ライブラリーは歴史が長く、小規模とはいえ専門家も一目置く存在だ。(NPO法人映画保存協会代表=東京都)

(2024年10月2日朝刊掲載)

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