×

ニュース

カーター氏100歳 交流30年超 元米大統領と甲奴 今月5年ぶりに米へ訪問団

 三次市甲奴町との友好を育んできたジミー・カーター元米大統領が1日で100歳を迎えた。同町小童(ひち)の寺にあった鐘の縁で続く相互交流は30年余に及び、市は誕生日を祝うメッセージを送る。今月中旬にはカーター氏の故郷へ三次の訪問団が5年ぶりに赴き、11月初めに記念イベントも開催予定だ。交流の軌跡を次代につなぐ機運が高まっている。(林淳一郎)

 「平和と相互理解に尽力された歩みに心から敬意と感謝を表します。交流がさらに10年、20年と続き、広がることを祈念します」。福岡誠志市長は1日、お祝いのメッセージを発表した。

 カーター氏は米国南東部のジョージア州アメリカス市出身。1977~81年、第39代大統領を務めた。退任後も平和・人権活動に尽力し、2002年にノーベル平和賞を受賞している。

 「カーターさんの活動は重みがあり、私たちも共鳴したんです」とNPO法人こうぬジミー・カーターシビックセンター国際交流協会の山岡克巳理事長(71)。自身も訪問団に加わり、カーター氏に2回会った。「親しみやすい人柄。だからこそ交流が続き、甲奴のよりどころになっている」

 きっかけは戦時中に金属供出された正願寺の鐘だ。戦後に英国を経て米国へ。1985年にカーター氏へ寄贈され、90年の甲奴訪問につながる。94年はロザリン夫人(昨年、96歳で死去)と来訪。中学生たちの相互訪問も始まり、双方の参加者は計千人を超す。22年には同州のカーターセンターに鐘をつるす鐘楼が甲奴の有志も協力して完成した。

 三次からの訪問団は新型コロナウイルス禍を経て今月、再開する。18~25日に中高生11人を含む計14人が向かう予定だ。「国際交流のスケールの大きさを感じてほしい」と願うのは、額縁製造の日本工芸(小童)の藤原佐千夫会長(69)。92年に有志と渡米し、カーター氏に面会。訪問団を物心両面で支えてきた。

 カーター氏は自宅静養中で、地元では100歳記念のコンサートなどが催されている。甲奴では住民発案の「カータースマイル ラン」の準備が進む。11月4日に参加者100人でランニングやウオーキングを楽しむ計画だ。甲奴町振興協議会連合会の沖田芳之会長(69)は「笑顔、絆あっての平和。長寿を祝う一人一人の思いを広く発信したい」と力を込める。

ピーナッツや「通り」、記念球場… 町内に証し

 甲奴町にはカーター氏との「交流の証し」がさまざまある。1990年の初来町を機に商店主らがJR福塩線甲奴駅前通りを「カーター通り」に変更。街路灯や看板をカーター氏の笑顔が彩る。

 92年にカーター記念球場を旧甲奴町が整備。市町村合併後も三次市内の野球チームや女子野球の活動拠点になっている。94年完成のジミー・カーターシビックセンターではカーター氏の歩みを紹介。市が現在改修中で、2025年度早期の再オープンを目指す。

 「カーターピーナッツ」は今や名産に。ピーナツ農家だったカーター氏から01年に種約30キロが届き、栽培が始まった。近年も計1ヘクタールほどで約600キロを収穫。11月中旬に町内である収穫祭などで販売する。地元商工会女性部がPRにとデザインしたTシャツやバッグなども生まれている。

(2024年10月2日朝刊掲載)

年別アーカイブ