緑地帯 石原香絵 地域のフィルムは地域で守る④
24年10月4日
ユネスコの「世界視聴覚遺産の日」を祝って、広島市映像文化ライブラリーでは今月3本のドキュメンタリー映画が上映される。筆者はそのうちの1本、映画保存の現在を余すことなく伝える「フィルム 私たちの記憶装置」(2021年製作)の解説を担当することになった。
スペイン出身のイネス・トハリア・テラン監督は米国の専門学校で映画保存を学び、複数のフィルムアーカイブで実務を担ったが、本職は映画作家だ。製作費をどうにか工面し、コロナ禍による中断もなんのその、カメラを片手に各国を旅して100人を超える関係者にインタビューを敢行した。同作はこれまで27カ国で上映され、スペイン、カナダ、ウルグアイ、タイ、韓国のフィルムアーカイブでは「世界視聴覚遺産の日」のメインイベントに選ばれた。
韓国での上映が好評だったといううわさを聞きつけ、パソコンの小さな画面で初めて視聴した時、ぜひ日本語字幕版を作成して劇場のスクリーンで上映したいという思いに駆られた。その願いを聞き入れ、国内の配給権を取得してくれたのが、膨大なコレクションを誇る私設の神戸映画資料館だ。日本でも人気のジョナス・メカス、ヴィム・ヴェンダース、ケン・ローチといった著名監督が登場する一方、日頃は裏方に徹している映写技師やフィルムの修復家の声もしっかり記録されている。映画保存の困難を語りながら、彼らの表情はどこか幸せそうだ。(NPO法人映画保存協会代表=東京都)
(2024年10月4日朝刊掲載)
スペイン出身のイネス・トハリア・テラン監督は米国の専門学校で映画保存を学び、複数のフィルムアーカイブで実務を担ったが、本職は映画作家だ。製作費をどうにか工面し、コロナ禍による中断もなんのその、カメラを片手に各国を旅して100人を超える関係者にインタビューを敢行した。同作はこれまで27カ国で上映され、スペイン、カナダ、ウルグアイ、タイ、韓国のフィルムアーカイブでは「世界視聴覚遺産の日」のメインイベントに選ばれた。
韓国での上映が好評だったといううわさを聞きつけ、パソコンの小さな画面で初めて視聴した時、ぜひ日本語字幕版を作成して劇場のスクリーンで上映したいという思いに駆られた。その願いを聞き入れ、国内の配給権を取得してくれたのが、膨大なコレクションを誇る私設の神戸映画資料館だ。日本でも人気のジョナス・メカス、ヴィム・ヴェンダース、ケン・ローチといった著名監督が登場する一方、日頃は裏方に徹している映写技師やフィルムの修復家の声もしっかり記録されている。映画保存の困難を語りながら、彼らの表情はどこか幸せそうだ。(NPO法人映画保存協会代表=東京都)
(2024年10月4日朝刊掲載)