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社説・コラム

天風録 『ガザ人道危機1年』

 きのうで2万8916日が過ぎた。広島に原爆が落とされてからの日数である。原爆資料館東館の地球平和監視時計が刻み続けている。西暦とは別の、ヒロシマ暦(れき)とでもいえる歴史感覚だろう▲パレスチナ自治区ガザの出身で広島県内に住むタレク・アメンさんは1年前から、二つの数字をテープに書いて、上着に貼る。1948年のイスラエル建国で同胞が難民となったナクバ(大破局)からの年数と、ガザでの戦闘開始からの日数である▲古里の哀史と今を知ってもらうよすがにしているのだろう。絶え間ない爆撃や銃撃にさらされ、明日をも知れぬ生き地獄状態が続く。ガザの人道危機が、きょうで1年になる▲現地当局によると、パレスチナ人犠牲者は4万1千人を超え、女性や子ども、高齢者が大半という。加えて病気や栄養不良による死者も18万人に及ぶとの報告もある。イスラエル軍の攻撃は、あまりに度が過ぎている▲祖国を失い、離散先で差別やホロコースト被害に遭った歴史がユダヤ人にもある。だから、世界を敵に回しても生き残るというのが譲らぬ論理だと聞く。「地球平和」の監視は、核兵器や核実験だけで事足りるのか…。広島も問われている。

(2024年10月7日朝刊掲載)

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