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作家の佐藤優さん・元広島市長の平岡敬さん対談 核の危機 声上げ続けよう 中区 被爆地広島の責務を強調

 東西冷戦を終結に導いた旧ソ連のゴルバチョフ元大統領の遺志を継ぎ、核戦争の愚かさを確かめ合う「人間の安全保障フォーラム」が5日、広島市中区の原爆資料館メモリアルホールであった。元外務省主任分析官で作家の佐藤優さん(64)と元広島市長の平岡敬さん(96)が対談し、国際情勢が緊迫する今、被爆地広島から声を上げ続ける意義を強調した。(山田祐)

 対談で2人は、パレスチナ自治区ガザに侵攻したイスラエルや、ウクライナに侵攻したロシアが核兵器を使う可能性に関連付け、被爆国の役割を論じた。

 平岡さんは「両国に『米国も使った』と言い訳をさせないためにも、まず米国に原爆投下は間違っていたと認めさせる必要がある」と指摘。佐藤さんは「核兵器禁止条約の締約国会議への日本のオブザーバー参加を実現させなくてはいけない。言論人の責務だと感じている」と応じた。

 佐藤さんは対談に先立つ講演で、核抑止論の愚かさを指摘。広島や長崎で平和運動に尽力した人々をたたえ「厳しい情勢だからこそ、核なき世界へ取り組みを継続してほしい」と訴えた。

 フォーラムは、ゴルバチョフ財団日本事務所などが1月に沖縄で開き、今回が2回目。同事務所やNPO法人ANT―Hiroshima(中区)などでつくる実行委員会が催した。

 参加した被爆体験伝承者の平野由美恵さん(77)=中区=は「紛争のニュースで無力感に襲われる日々だが、原爆の惨禍を発信する歩みを止めてはいけないとあらためて感じた」と話した。

(2024年10月6日朝刊掲載)

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