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社説・コラム

天風録 『所信表明』

 守ることに熱心なのは「国防族」の政治家だからだろうか。きのう就任後初めて所信表明演説に臨んだ石破茂首相。地に落ちた政治への信頼回復に向け、五つのことを守ると強調した▲ルール、日本、国民、地方、若者・女性の機会。この5本柱を政策の中心に据えるという。当たり前と思える項目ばかりで目新しさを欠く。それでも、多様性のある地域分散型社会や人命最優先の防災立国といった目標に限れば、共感を呼びそうだ▲気になるのは、派閥の裏金事件に関与した国会議員の扱いだ。衆院選で自民党が公認するのは「理解できない」が、世論調査で8割近くに達した。党の処分は甘過ぎて、国民の多くは納得していない証しといえよう▲それもそのはず、裏金衆院議員の大半は政治倫理審査会への出席要求に応じなかった。やましくないなら、なぜ出席して説明を尽くさなかったのか。衆院解散となれば、「けじめ」を付けないまま逃げ切られてしまう▲ルール破りを見過ごしていると、周りに悪影響を与えかねない。信頼回復を望むなら、原則公認などあり得ない。そんな判断が示されれば、「ルールを守る」という所信表明の約束を早々と破ることになる。

(2024年10月5日朝刊掲載)

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