緑地帯 石原香絵 地域のフィルムは地域で守る⑧
24年10月10日
映画フィルムは文化遺産だと信じたいが、一般的にそのような理解が得られているかというと心もとない。国指定の重要文化財「紅葉狩」「史劇楠公訣別」「小林富次郎葬儀」の可燃性フィルムは、全て初期の無声記録映画で、撮影地は現在の東京都。そして所蔵機関は国立映画アーカイブに限られる。確かに貴重な3本ではあるが、日本映画の魅力はそれだけに集約されるものではない。近い将来、地域のフィルムアーカイブの所蔵作品が重要文化財に選ばれてもおかしくはないだろう。
国立博物館ですら収蔵庫の維持費用の捻出に苦しむ昨今、国内の収集・保存・公開施設を巡る現状は厳しいが、地方の6都市にフィルムアーカイブを擁する国はアジアでは珍しく、日本の大きな強みといえる。また、映画資料は映画を専門としない施設にも数多く所蔵されている。広島市内に点在する資料をひもづけていく作業も、広島市映像文化ライブラリーが担うべき大きな仕事の一つだ。
ユネスコの「世界視聴覚遺産の日」には危機的な状況にある映像資料を救済する目的もある。2022年には、キーウにあるウクライナ最大規模のフィルムアーカイブに対して、世界のフィルムアーキビストが連帯を表明した。終戦80年となる25年に向けて、広島には「平和」をテーマに掲げたフィルムアーカイブがあることを多くの人と共有したい。 (NPO法人映画保存協会代表=東京都) =おわり
(2024年10月10日朝刊掲載)
国立博物館ですら収蔵庫の維持費用の捻出に苦しむ昨今、国内の収集・保存・公開施設を巡る現状は厳しいが、地方の6都市にフィルムアーカイブを擁する国はアジアでは珍しく、日本の大きな強みといえる。また、映画資料は映画を専門としない施設にも数多く所蔵されている。広島市内に点在する資料をひもづけていく作業も、広島市映像文化ライブラリーが担うべき大きな仕事の一つだ。
ユネスコの「世界視聴覚遺産の日」には危機的な状況にある映像資料を救済する目的もある。2022年には、キーウにあるウクライナ最大規模のフィルムアーカイブに対して、世界のフィルムアーキビストが連帯を表明した。終戦80年となる25年に向けて、広島には「平和」をテーマに掲げたフィルムアーカイブがあることを多くの人と共有したい。 (NPO法人映画保存協会代表=東京都) =おわり
(2024年10月10日朝刊掲載)