日本被団協 ノーベル平和賞 非人道的原爆被害を告発 核廃絶訴え68年 評価
24年10月12日
2024年のノーベル平和賞に被爆者の全国組織、日本被団協が決まった。ノルウェーのノーベル賞委員会が11日、発表した。結成から68年。非人道的な原爆被害を世界へ告発し、「ふたたび被爆者をつくるな」と、核兵器廃絶を訴え続けてきた運動が高く評価された。(岡田浩平)
米軍が広島、長崎へ原爆を投下してから79年。ウクライナに侵攻したロシアが「核の脅し」を繰り返し、イスラエルがパレスチナ自治区ガザで戦闘を続ける中、核戦争を回避し、世界平和の実現を国際社会に迫る受賞となる。
ノーベル賞委員会は「被団協と被爆者の並々ならぬ努力は核のタブー確立に大きく貢献した。肉体的苦しみやつらい記憶を、平和への希望や取り組みを育むことに生かした全ての被爆者に敬意を表したい」とたたえた。
日本被団協代表委員を務める広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(82)は広島市役所で記者会見。21年に96歳で亡くなった坪井直・前理事長たち歴代の被爆者運動のリーダーたちに思いをはせ、「本当にうそみたいだ。核兵器廃絶、恒久平和の実現を訴える大きな力になる」と喜んだ。
日本被団協は、1956年8月10日に広島、長崎の被爆者たちが結成した。現在は各都道府県の組織で構成し、広島からは広島県被団協(箕牧理事長)が加盟。もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)もオブザーバー参加している。原爆被害に対する国の償いを要求する一方、核拡散防止条約(NPT)再検討会議などの国際会議にも代表団を派遣。被爆体験を証言し、核兵器廃絶を訴えてきた。
16年4月からは、核兵器を禁止し、廃絶する条約の締結を全ての国に迫る「ヒバクシャ国際署名」を国内外の平和団体と展開。約1370万筆を集めた。17年7月に122カ国・地域の賛同を得て国連で採択された核兵器禁止条約は前文で被爆者に触れ、核兵器の使用、使用するとの威嚇、保有などを全面的に違法化。21年1月22日に発効した。
授賞式は12月10日にオスロであり、賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億5千万円)が贈られる。
日本関連のノーベル平和賞受賞は「非核政策の推進」などを理由とした74年の佐藤栄作元首相に続き2例目。禁止条約の制定に貢献した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))が17年に受けた際は、授賞式でカナダ在住の広島の被爆者サーロー節子さん(92)がスピーチした。
日本被団協のノーベル平和賞受賞決定を受け、広島市の松井一実市長は11日、市内で報道陣の取材に応じ「心からお祝い申し上げたい。核兵器禁止条約の成立に貢献されたことが評価されたのではないか」と喜んだ。
核兵器を巡る厳しい世界情勢にも言及し「受賞は世界に警鐘を鳴らし、しっかり対応を取ろうという重大なメッセージを発している。引き続き日本被団協と一緒に頑張りたい」と決意を述べた。
広島県の湯崎英彦知事も県庁で取材に応じ「被爆者の不屈の努力に光を当て評価されたことに感謝する」と祝った。「受賞を契機に世界中の人々が核廃絶に決意を持って行動していくことを期待する」と述べた。(河野揚、川上裕)
日本被団協
正式名称は日本原水爆被害者団体協議会。1956年8月10日、長崎市での第2回原水爆禁止世界大会2日目に結成した。結成宣言「世界への挨拶(あいさつ)」では、「私たちの体験をとおして人類の危機を救おうという決意を誓い合った」と記す。1984年に原爆被害者の基本要求をまとめ、「核兵器なくせ」「原爆被害への国家補償」を運動の2本柱に据える。現在の代表委員は箕牧(みまき)智之、田中熙巳(てるみ)、田中重光の3氏。事務局は東京都港区にある。
ノーベル平和賞
国際的な平和活動や軍縮、貧困、環境問題への対策など人類の平和に貢献した人物・団体に授与される。ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレド・ノーベル(1833~96年)の遺言に基づき1901年創設。ノルウェー国会が任命した5人の委員会が選考し、同国のオスロで授与する。授賞式の12月10日はノーベルの命日。
(2024年10月12日朝刊掲載)
米軍が広島、長崎へ原爆を投下してから79年。ウクライナに侵攻したロシアが「核の脅し」を繰り返し、イスラエルがパレスチナ自治区ガザで戦闘を続ける中、核戦争を回避し、世界平和の実現を国際社会に迫る受賞となる。
ノーベル賞委員会は「被団協と被爆者の並々ならぬ努力は核のタブー確立に大きく貢献した。肉体的苦しみやつらい記憶を、平和への希望や取り組みを育むことに生かした全ての被爆者に敬意を表したい」とたたえた。
日本被団協代表委員を務める広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(82)は広島市役所で記者会見。21年に96歳で亡くなった坪井直・前理事長たち歴代の被爆者運動のリーダーたちに思いをはせ、「本当にうそみたいだ。核兵器廃絶、恒久平和の実現を訴える大きな力になる」と喜んだ。
日本被団協は、1956年8月10日に広島、長崎の被爆者たちが結成した。現在は各都道府県の組織で構成し、広島からは広島県被団協(箕牧理事長)が加盟。もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)もオブザーバー参加している。原爆被害に対する国の償いを要求する一方、核拡散防止条約(NPT)再検討会議などの国際会議にも代表団を派遣。被爆体験を証言し、核兵器廃絶を訴えてきた。
16年4月からは、核兵器を禁止し、廃絶する条約の締結を全ての国に迫る「ヒバクシャ国際署名」を国内外の平和団体と展開。約1370万筆を集めた。17年7月に122カ国・地域の賛同を得て国連で採択された核兵器禁止条約は前文で被爆者に触れ、核兵器の使用、使用するとの威嚇、保有などを全面的に違法化。21年1月22日に発効した。
授賞式は12月10日にオスロであり、賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億5千万円)が贈られる。
日本関連のノーベル平和賞受賞は「非核政策の推進」などを理由とした74年の佐藤栄作元首相に続き2例目。禁止条約の制定に貢献した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))が17年に受けた際は、授賞式でカナダ在住の広島の被爆者サーロー節子さん(92)がスピーチした。
核禁条約成立に貢献 広島市長と知事 祝福
日本被団協のノーベル平和賞受賞決定を受け、広島市の松井一実市長は11日、市内で報道陣の取材に応じ「心からお祝い申し上げたい。核兵器禁止条約の成立に貢献されたことが評価されたのではないか」と喜んだ。
核兵器を巡る厳しい世界情勢にも言及し「受賞は世界に警鐘を鳴らし、しっかり対応を取ろうという重大なメッセージを発している。引き続き日本被団協と一緒に頑張りたい」と決意を述べた。
広島県の湯崎英彦知事も県庁で取材に応じ「被爆者の不屈の努力に光を当て評価されたことに感謝する」と祝った。「受賞を契機に世界中の人々が核廃絶に決意を持って行動していくことを期待する」と述べた。(河野揚、川上裕)
日本被団協
正式名称は日本原水爆被害者団体協議会。1956年8月10日、長崎市での第2回原水爆禁止世界大会2日目に結成した。結成宣言「世界への挨拶(あいさつ)」では、「私たちの体験をとおして人類の危機を救おうという決意を誓い合った」と記す。1984年に原爆被害者の基本要求をまとめ、「核兵器なくせ」「原爆被害への国家補償」を運動の2本柱に据える。現在の代表委員は箕牧(みまき)智之、田中熙巳(てるみ)、田中重光の3氏。事務局は東京都港区にある。
ノーベル平和賞
国際的な平和活動や軍縮、貧困、環境問題への対策など人類の平和に貢献した人物・団体に授与される。ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレド・ノーベル(1833~96年)の遺言に基づき1901年創設。ノルウェー国会が任命した5人の委員会が選考し、同国のオスロで授与する。授賞式の12月10日はノーベルの命日。
(2024年10月12日朝刊掲載)