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広島市映像文化ライブラリー 「平和のシネマテーク」開催中

■記者 石川昌義

 戦争や原爆の悲惨さを描く映画を集中上映するイベント「平和のシネマテーク」が、広島市中区基町の市映像文化ライブラリーで開催中だ。夏休み中とあって、親子での観賞に適した作品も盛りだくさん。同ライブラリー職員の佐藤武さん(49)に見どころを紹介してもらった。

 佐藤さんは子ども向け作品としてまず、灰谷健次郎原作の「太陽の子 てだのふあ」(30日)を選んだ。神戸で沖縄料理店を営む父と少女が主人公。佐藤さんは「心優しい常連客と父親との何げない会話から、人々の心に刻まれた沖縄戦の傷が浮かび上がる」と解説する。

 「ふたりのイーダ」(8月1日)と「クロがいた夏」(2日)は広島が舞台。佐藤さんは「松谷みよ子の原作で有名な『ふたりのイーダ』は、原作そのままのファンタジックな世界。戦時中の広島を描くアニメ『クロがいた夏』は、幼児と子猫の触れ合いから、原爆が奪う命の重みをストレートに描いている」と評する。

 8月6日に上映するのは「ひろしま」。占領期が終わった翌年、1953年の作品だ。「表現活動の規制が無くなり、原爆被害をありのままに伝えようとした映画人の意欲を感じて」と佐藤さん。被爆のつめ跡を深く刻みながら、復興のつち音が響く広島市内の風景も見どころだ。

 もうひとつの被爆地、長崎が舞台の作品も多い。佐藤さんは黒沢明監督「八月の狂詩曲(ラプソディー)」(9日)を薦める。長崎の田舎で静かに暮らす祖母と、帰省した孫の交流から、家族を奪った原爆への静かで激しい怒りを描く黒沢監督晩年の作品だ。佐藤さんは「被爆の記憶を次世代に継承することの大切さを感じてほしい」と願う。

 同ライブラリーは8月5、6の両日午後7時から、旧広島市民球場のバックネットを使ったアニメ映画観賞会を開く。5日は「ピカドン」で知られる木下蓮三さんの短編作、6日は市民球団の誕生を描く「カープ誕生物語 かっ飛ばせ!ドリーマーズ」を上映する。

 同ライブラリーでの上映開始時刻は午前10時半、午後2時(一部作品は午後6時も)。観賞料は500円、18歳まで250円。旧広島市民球場でのイベントは無料。先着500人。Tel082(223)3525。

(2009年7月28日朝刊掲載)

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