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社説・コラム

社説 衆院選公示 政治への信頼取り戻せるか

 第50回衆院選がきのう公示され、27日の投開票日に向けて選挙戦が始まった。与野党が政治改革などを争点に論戦を繰り広げる。

 今回の選挙の意義は、石破茂首相と新内閣を信任するかどうかにとどまらない。首相が路線を引き継ぐ岸田政権の3年間のみならず、その土台となった安倍政権以降、12年間続いた自民、公明両党による政権運営に評価を下す機会とも捉えられよう。

超短期の決戦に

 問われるのは、政党や政治家の姿勢だけではないだろう。今回の選挙には、自民党派閥の裏金事件に絡んだ前職も数多く立候補した。自民党の公認が適切だったかを含め、裏金事件などへの対応が金のかからぬ政治に本当につながるのか、われわれ有権者の判断も問われることになる。

 超短期の決戦である。首相就任から8日後の衆院解散は戦後最短、解散から投開票日までの18日間は戦後2番目に短い。各党には、言葉を尽くして有権者の審判に資する論戦を望みたい。

 首相が選挙を急ぐのは、新内閣の不祥事が少ないうちにとの思いからだろう。総裁選での発言を翻して十分な国会審議に応じず、解散を断行した判断は、長期にわたり政権を担ったおごりではないか。

 岸田文雄前首相が退陣したのは、裏金事件などで国民の信頼を失ったためだ。最大の争点が政治改革であることは揺るがない。首相は決意にとどまらず具体策を示す必要がある。

核禁条約も争点

 議論すべき課題は山積する。「核兵器のない世界」に向けた取り組み、とりわけ核兵器禁止条約への対応も日本被団協のノーベル平和賞受賞が決まったことで関心が高まった。

 物価高への対策や地方創生の議論も欠かせない。ただ日本の財政赤字は先進国で最悪の水準である。首相はきのうの街頭演説で新たな経済対策の財源となる補正予算を巡り、一般会計の歳出が13兆円余りだった前年度を上回る規模とする考えを示した。人気取りのばらまき政策には厳しい目を向けたい。

 自民党は政権に返り咲いた2012年以降、単独で過半数を上回る議席を得てきた。まずは自民1強体制が継続するのかに注目したい。

 野党が自民党の「政治とカネ」問題を追及するのは当然だ。きのうの演説では多くの野党党首が裏金事件に時間を割き、立憲民主党の野田佳彦代表は「自民党政治に決別しよう」と政権交代を訴えた。

 与党の過半数割れを狙う上で、公約を通じて政権担当能力を示し、自民党から離れる有権者の受け皿となるよう努めることが重要である。過半数割れの先に何があるのか、論戦でしっかりと語り、有権者から支持されなくてはならない。

低迷する投票率

 野田代表をはじめ野党党首の顔ぶれも前回選から大きく変わった。有権者の評価を初めて受ける立場は首相と変わらない。

 共同通信社が12、13日に実施した全国電話世論調査(第1回トレンド調査)で、望ましい選挙結果は「与党と野党の勢力が伯仲する」が50・7%で最多だった。有権者が政治に緊張感を求めているのは間違いない。

 衆院選の投票率は過去4回続けて50%台で推移した。特に若者の投票率低迷は著しい。7月の東京都知事選では既成政党離れも見られた。各党には、政治への信頼を取り戻す使命が課せられている。

 小選挙区の定数「10増10減」で、区割りが変わって初の選挙となる。中国地方は広島、山口、岡山県で各1減り計17。比例代表中国ブロックの定数も11から10に減った。新しい枠組みの中、各党や候補者の訴えに耳をすませ、熟考して1票を投じたい。

(2024年10月16日朝刊掲載)

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