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[被団協ノーベル平和賞] 被爆者の声 世界に届けて 代表委員 田中さん

受賞決定後初 若者へ訴え

 ノーベル平和賞に決まった日本被団協の代表委員を務める田中熙巳(てるみ)さん(92)=埼玉県新座市=が16日、さいたま市の浦和高で長崎市での被爆体験を語った。広島、長崎に次いで、核兵器が「三度使われてはいけない」と訴え、「核兵器は若者の未来の問題。使わせないよう奮闘してほしい」と呼びかけた。(宮野史康)

 田中さんが受賞決定後に証言するのは初めてで、広島への修学旅行を来月に控える2年生約350人に約1時間話した。原爆投下時は爆心地から3・2キロ離れた自宅で本を読んでいて、「爆音がして身の回りが真っ白になった」。爆風でガラス戸が体に覆いかぶさったが割れておらず、無事だった。「奇跡だ。だから生きて皆さんにお話しできる」と話した。

 被爆の3日後も語った。爆心地近くの伯母の家への道中には遺体が散乱していた。亡くなっていた伯母を火葬した後、遺骨を目にすると我慢できず大泣きした。「人間らしい心がよみがえってきた。今でもあの時の様子が浮かぶと涙が出る」と言葉を絞り出した。

 今回の受賞決定については、核使用の脅威が高まる中で「被爆者の証言を世界中の人に聞いてもらう必要があるからだ」との受け止めを述べた。核を巡る国際情勢は危機的との見方を伝え「規範が崩されようとしている。三度使われてはいけない」と力を込めた。

 生徒は真剣な表情で聞き入っていた。島村大輝さん(16)は「核兵器を使わせないため、ノーベル平和賞はゴールではなく始まりだと思う。受賞を意味付ける役割は私たちの世代にある」と話した。

(2024年10月17日朝刊掲載)

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