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核なき世界か 抑止力か 問われる被爆国のスタンス 各党公約は? 被団協ノーベル賞 変わる潮目

 日本被団協のノーベル平和賞決定で改めて問われる被爆国のスタンス。衆院選の各党公約はどうか。自民党は、石破茂総裁(首相)が議論を促す「核共有」を盛り込まなかったが、核超大国・米国の抑止力を重視。立憲民主党などの野党は核兵器禁止条約へのオブザーバー参加や批准をうたう。(編集委員室 下久保聖司、田中美千子)

 政党トップの思いを取り込む選挙公約。前回の衆院選で、被爆地広島を地盤とする岸田文雄前首相は「核軍縮・不拡散」を前面に押し出した。対して石破氏は以前から核抑止力を肯定してきた。ただ今回の公約には、持論の「核共有」を明文化しなかった。

 米国の核兵器を同盟国が共同管理・運用する仕組みで、石破氏が改めて提起する論文を9月に発表したところ物議を醸した。解散前の衆院代表質問で石破氏は非核三原則を堅持すると強調。「持たず、つくらず、持ち込ませず」とする国是について、岸田内閣の見解を踏襲する姿勢を示した。

 衆院解散2日後の11日、日本被団協のノーベル平和賞決定というビッグニュースが飛び込んできた。翌日の日本記者クラブでの党首討論会。非核三原則の堅持などを公約に掲げる立憲民主党の野田佳彦代表が、石破氏に切り込む。被団協をたたえ、「そんな時に核共有、核持ち込みを許容するような発言をしている日本のトップでいいのか」。

 公約で「核兵器禁止条約に参加する政府をつくる」とした共産党の田村智子委員長も石破氏を名指しし「条約を批准すべきだ」。れいわ新選組、社民党も公約で条約の批准を打ち出している。

 これに対し石破氏は「核廃絶の思いは変わらない」としつつも持論を唱えた。旧ソ連の残した核をウクライナが手放したことがロシアによる侵攻を招いたと主張。「核抑止から目を背けてはいけない」「現実として抑止力は機能している」などと述べた。

 とはいえ自民党は公約で核共有をうたっておらず、連立を組む公明党も反対する姿勢を公約に明記。なおかつ、核兵器禁止条約については「批准への環境整備」を誓う。

 他党の公約はどうか。日本維新の会は、米国との原子力潜水艦の共有を提案した上で、「米国の核拡大抑止における日本側の意思決定への関与や共同訓練の実施を求める等、日米同盟の一層の深化を図る」としている。

 国民民主党は、中国や北朝鮮の核兵器保有を念頭に「拡大抑止の実効性確保について具体的な議論が必要」とする。参政党は党政策で核シェルターの普及などを唱え、衆院選公約には「現代の世界情勢に合わせた戦略的関係を構築」と記す。

 日本の方向性を決める衆院選と折しも重なった日本被団協のノーベル平和賞決定。「核なき世界」を目指すのか、それとも核抑止力にすがり続けるのか。大きな争点だ。

(2024年10月18日朝刊掲載)

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