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[被団協ノーベル平和賞] 核と人類 共存できない フリードネス委員長 「被爆者の声 聞くとき」

 中国新聞のインタビューにオンラインで応じたノルウェー・ノーベル賞委員会のヨルゲン・フリードネス委員長(39)は、「あの日」の記憶を語り、次世代への継承にも力を注いできた被爆者への賛辞を惜しまない。それでも高まる核使用の脅威を憂慮し、世界各国のリーダーへ「核と人類は共存できない」と訴えた。(編集委員・田中美千子)

  ―被爆者運動を、どう評価していますか。
 ノルウェーの子どもたちは原爆投下や被爆者について知っている。なぜか。被爆者が自らの物語を語り続けてきてくれたからだ。彼らは証言活動や教育プログラムを通じ、体験を何度となく語ることで「核のタブー」をつくり上げた。「核兵器は二度と使ってはならない」という国際規範だ。このタブーが維持され、核は約80年使われなかった。

 彼らが次世代へ見事に記憶をつないでいることにも感銘を覚える。高校生平和大使の活動も知っている。良い例だ。記憶をいかに継承していけるかが、今後の鍵だ。世界もヒロシマに学びたい。

  ―日本被団協は長年、受賞候補とされてきました。なぜ今なのですか。
 今まさに核使用の脅威が高まり、核のタブーが脅かされている。保有国は核の近代化に走り、その破壊力は80年前よりはるかに増した。使われれば無数の命が瞬時に奪われ、気候にも壊滅的な影響を与える。核は限定的な地域の問題ではない。人類全体の問題なのだ。

 世界の政治指導者に向けた私たちのメッセージは明確だ。核と人類は共存できず、保有国が「使うぞ」と脅すことも、弾頭数を増やすことも世界情勢を悪化させる。日本政府はもちろん、各国政府は今こそ、被爆者の声に耳を傾けるべきだ。

  ―どんな授賞式にしたいですか。
 亡くなった人を含め、全人類のために人生をささげてきた被爆者をたたえる。感動的で力強い式典になるだろう。

Jørgen Frydnes
 1984年、ノルウェー・ベルゲン生まれ。英ヨーク大で国際政治学の修士号を取得。国境なき医師団の活動に12年取り組み、2011年にノルウェー南部ウトヤ島で起きたテロ事件では復興活動の責任者を23年まで務めた。21年にノーベル賞委員会の委員となり、24年から委員長。表現の自由を守り、投獄された作家を支える「PENノルウェー」事務局長でもある。

(2024年10月30日朝刊掲載)

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