海自呉地方隊創設70年 第6部 インタビュー <1> 海上自衛隊呉地方総監 福田達也氏(57)
24年10月31日
市や地域経済と相互協力
活動円滑化へ情報公開も
政府が「防衛力の抜本的な強化」を掲げ、防衛費を増額させる中、7月に創設70年となった海上自衛隊呉地方隊。拠点の呉基地(呉市)をはじめ、その姿や役割、そして地域との関わりは今後どうなっていくのか。専門家や関係者に課題や展望を聞く。
―呉に拠点を置き70年の節目を迎えました。
海自が活動、任務をする上で最高の環境にある。基地が地域経済に貢献しているという声もある。今年、市や商工会議所と包括協定を結んだ。相互協力を進めていきたい。
―日本を取り巻く安全保障の環境をどう考えていますか。
本当に厳しい。他国による侵略だけでなく、海賊行為やテロにも備えなければいけない。任務、活動は増えており、部隊の再編も見込まれる。
3月に隊員増か
―呉地方隊の位置付けは。
警備区には紀伊水道から豊後水道までが含まれ、輸送の大動脈がある。戦略的要所と言っても過言ではなく、警備をしっかりする必要がある。呉からはインド太平洋地域や中東での任務にも艦艇を派遣している。自衛隊が存在感を発揮することが不安定な状態になるのを防ぐことにつながると考える。来年3月には陸海空共同の輸送部隊が呉に新編され、隊員数が増えることが予想される。
―7月には特定秘密の不適切運用や潜水手当の不正受給などの不祥事で、呉の隊員を含め一斉に処分されました。
一連の不祥事は重く受け止めなければいけない。国民の信頼を損なっている。組織の体制、態勢の一部に不具合があったと認識している。そうした部分は海自を挙げて是正しているところであり、再発しないようにしっかりとやっていく。
基地防御を意識
―呉基地に近い製鉄所跡地に防衛省が複合防衛拠点を整備したい意向を示しています。実現すれば標的になるのではと心配する声もあります。
防衛省の所管で、皆さんが知っている以上の情報が私に入って来ないのが現状。ただ、基地があることで攻撃されるのではないかという懸念があるのは当然だ。だからこそ、基地の防御などをしっかりしていかなければならないと考えている。
―情報公開についてどうお考えですか。
地域の理解を得られないと活動が円滑に実施できない。知ってもらえないことほどよくないものはない。オープンにしていく努力はこれまで以上にしている。(聞き手は小林旦地)
≪略歴≫大阪府八尾市出身。護衛艦隊司令官や統合幕僚監部防衛計画副部長などを歴任。呉での勤務は3度目。
(2024年10月31日朝刊掲載)