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社説・コラム

天風録 『ゴジラ70年』

 70年前のきょう歴史に残る映画が封切られた。「ゴジラ」。水爆実験で南の海を追われた巨大な怪物が東京を襲い、放射能の熱線を吐いて破壊の限りを尽くす。その8カ月前のビキニ事件への怒りを込めた物語と言えよう▲961万人を動員した作品は大戦の記憶を節々で伝える。ゴジラ出現を聞いた男性は疎開を口にして「また厭(いや)な世の中になりやがったな」。その中で元気あふれるのが女性の国会議員だ▲若き日の菅井きんさんの熱演が目を引く。怪物が水爆の落とし子なのは重大な国際問題だ、と公表に反対する男性議員に「重大だからこそ公表すべきだ」と叫ぶ…。参政権を得た女性が発言力を持ち始めた時代を映す▲現実の戦後史とも重なる。ビキニでの第五福竜丸の被曝(ひばく)に危機感を抱き、いち早く原水爆禁止の署名に立ち上がったのは東京・杉並のごく普通の女性たちだ。風評被害で売り上げが減った鮮魚商の妻の訴えを踏まえて▲70年を経た今はどうか。この衆院選で女性議員は少し増えて衆参でゴジラ公開時の5倍強となったが、まだ全体の2割以下。国連の委員会も何とかせよと勧告した。思えば11月3日は男女平等をうたう日本国憲法の公布日でもある。

(2024年11月3日朝刊掲載)

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