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[被団協ノーベル平和賞] 授賞式に31人派遣 被爆者17人 韓国からも

 ことしのノーベル平和賞に決まった日本被団協は1日、ノルウェーのオスロ市庁舎で12月10日にある授賞式に国内外の被爆者や被爆2世たち31人を派遣すると発表した。被爆者は17人。代表委員3人は式で登壇し、このうち田中熙巳(てるみ)さん(92)が演説する。(宮野史康)

 他に登壇するのは箕牧(みまき)智之さん(82)と田中重光さん(84)。田中熙巳さんは「再び被爆者をつくらせない」ための思いを発信する。

 被爆の惨禍をともに伝えてきた韓国原爆被害者協会の鄭源述(チョン・ウォンスル)会長(81)、在ブラジル原爆被爆者の会の渡辺淳子理事(81)も同行。被団協にゆかりの深い個人も出席する。一部を除き、12月8日に日本を出発。11日には被爆者が現地の高校や大学で証言する。13日に帰国する。

 広島で胎内被爆した被団協事務局次長の浜住治郎さん(78)は、東京都内の事務所で取材に応じ「危険な国際情勢の中で、核兵器は使ってはいけないという『核のタブー』を広めたい」と力を込めた。

中国地方3人 箕牧さん・田中さんら

 ノーベル平和賞の授賞式に出席する日本被団協の代表団に、中国地方から3人が名を連ねた。広島で被爆した代表委員の箕牧(みまき)智之さん(82)=広島県北広島町、代表理事の田中聡司さん(80)=広島市西区=と、被爆2世で代表理事の本間恵美子さん(74)=松江市。国内外から注目を集める機会に核兵器廃絶を世界に訴え、次世代に伝えていく決意を示した。

 箕牧さんは3歳の時に入市被爆した。授賞式に向け、被爆者運動を引っ張ってきた故森滝市郎さんや故坪井直(すなお)さんを思い「森滝さんの『核と人類は共存できない』、坪井さんの『諦めない』という思いを伝える」と語った。

 田中さんは当時住んでいた下関市から母の実家があった広瀬北町(現中区)に入市被爆し、祖父母たちを失った。授賞式に高齢の被爆者たちが多く参加する点を「核戦争が現実に迫る危機的な状況で、老いた体を押してでも訴えなければならない局面だからだ」と指摘。核兵器保有国を動かす必要性を強調した。

 母が広島に入市被爆した本間さんは島根県原爆被爆者協議会の会長を務め、6月に被爆2世として初めて日本被団協の役員となった。「被爆者が高齢化する中、2世である私たちに何ができるか学んで帰りたい」と意気込んだ。

 一方、広島市によると、2017年に非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))への授賞式に出席した松井一実市長は今回、現時点でノーベル賞委員会から招待されていない。(下高充生、上田光、野平慧一)

(2024年11月2日朝刊掲載)

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