広島市立大広島平和研究所 梅原季哉教授に聞く 返り咲きのトランプ氏 核使用の重み感じず
24年11月8日
米国で来年1月にトランプ氏が大統領に返り咲き、核政策や国際情勢にどんな影響が出るのか。広島市立大広島平和研究所の梅原季哉教授(国際関係論)に見解を聞いた。(下高充生)
trong>―トランプ氏の2期目の外交政策は。trong>
トランプ氏の外交を貫く最大の原則は無原則であることと、自分の人気取りができるかどうかだ。国際社会は振り回され、国連や多国間の条約が意味をなさなくなる。再選を目指す重しが取れた2期目というのもリスクで、何でもできてしまう可能性がある。
trong>―1期目では小型核の開発も進めましたね。trong>
共和党のタカ派が鼻をつまみながらも支持するのは、トランプ氏が核兵器に担保される「力による平和」を掲げているからだ。核兵器使用に歴代大統領が感じたほどの重みを感じず、力の象徴としてためらわず振り回すだろう。米国で核兵器使用は大統領の専権事項であり、危惧している。
trong>―中東情勢への影響は。trong>
トランプ氏は前回政権で、イランの核開発を止めていた核合意をほごにした。イラン側は核開発で対抗するしかないと心に決めている。対してイスラエル側には、イランが核を持つのを武力で防ごうという主張もある。親イスラエルのトランプ氏が止められるか分からない。パレスチナ自治区ガザの情勢も泥沼化するだろう。
trong>―ウクライナ情勢も混迷を深めていますね。trong>
トランプ氏は大統領になったら戦争を終わらせると言っている。ロシアがこれを利用し、「目くらまし」に停戦提案のようなものを出してくるのは考えられる。ただ、ウクライナが受け入れる内容ではないだろう。仮に同国の世論がのみ込むしかないとなっても、ロシアの侵攻におびえる欧州の中小国の間で米国が守ってくれないという気持ちをかき立て、持続可能な平和にはならない。
trong>―被爆地広島、日本政府はどう向き合うべきでしょうか。trong>
核を絶対に使ったら駄目だと伝え続けないといけない。原爆資料館や平和記念式典に来てもらい核兵器を使った結果を示しても良いと思う。無原則であることに望みをかけ、核兵器をなくせば米国は偉大になるという方向に関心を持っていきたい。
trong>うめはら・としやtrong>
1964年、東京都出身。国際基督教大を卒業後、88年に朝日新聞社に入り、ワシントン特派員、ヨーロッパ総局長、論説委員などを歴任。2024年4月から現職。
(2024年11月8日朝刊掲載)
トランプ氏の外交を貫く最大の原則は無原則であることと、自分の人気取りができるかどうかだ。国際社会は振り回され、国連や多国間の条約が意味をなさなくなる。再選を目指す重しが取れた2期目というのもリスクで、何でもできてしまう可能性がある。
共和党のタカ派が鼻をつまみながらも支持するのは、トランプ氏が核兵器に担保される「力による平和」を掲げているからだ。核兵器使用に歴代大統領が感じたほどの重みを感じず、力の象徴としてためらわず振り回すだろう。米国で核兵器使用は大統領の専権事項であり、危惧している。
トランプ氏は前回政権で、イランの核開発を止めていた核合意をほごにした。イラン側は核開発で対抗するしかないと心に決めている。対してイスラエル側には、イランが核を持つのを武力で防ごうという主張もある。親イスラエルのトランプ氏が止められるか分からない。パレスチナ自治区ガザの情勢も泥沼化するだろう。
トランプ氏は大統領になったら戦争を終わらせると言っている。ロシアがこれを利用し、「目くらまし」に停戦提案のようなものを出してくるのは考えられる。ただ、ウクライナが受け入れる内容ではないだろう。仮に同国の世論がのみ込むしかないとなっても、ロシアの侵攻におびえる欧州の中小国の間で米国が守ってくれないという気持ちをかき立て、持続可能な平和にはならない。
核を絶対に使ったら駄目だと伝え続けないといけない。原爆資料館や平和記念式典に来てもらい核兵器を使った結果を示しても良いと思う。無原則であることに望みをかけ、核兵器をなくせば米国は偉大になるという方向に関心を持っていきたい。
1964年、東京都出身。国際基督教大を卒業後、88年に朝日新聞社に入り、ワシントン特派員、ヨーロッパ総局長、論説委員などを歴任。2024年4月から現職。
(2024年11月8日朝刊掲載)