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[被団協に寄せて ノーベル平和賞] 大学生 高垣慶太さん 受賞生かすのは私たち

活動 一人でも多く知って

  ≪広島で生まれ育ち、進学先の東京で核兵器廃絶に向けて活動している。日本被団協のノーベル平和賞受賞決定に涙が出るほど感動したが、周囲の若者とは温度差を感じている。≫

 正直なところ、同世代の友人で日本被団協を知っている人はいないと言ってもいいです。平和賞のニュースを聞き、私の活動が受賞したと思った人もいたくらい。

 今の社会がどうやって成り立っているかについて考えなくても日々過ごすことはできます。でも、根底に「二度と戦争を起こさない」「誰の上にも原爆を落とさない」という被爆者たちの思いと運動がある。一人でも多くの人が、被爆者の筆舌に尽くし難い体験を知ってほしい。今度、大学の授業に被爆者を招いて、交流する機会をつくるつもりです。

 ≪赤十字国際委員会(ICRC)の駐日代表部でボランティアをした縁で、若者代表として2022年6月にオーストリア・ウィーンであった核兵器禁止条約の第1回締約国会議に出席。同年10月から、世界の核被害を学ぶ学習会を続け、カザフスタンや太平洋マーシャル諸島を訪れた。≫

 世界中から被団協の受賞を祝うメッセージが届きました。旧ソ連の核実験が繰り返されたカザフスタンのセメイ市(旧セミパラチンスク市)出身の友人は「心から被爆者の方々に感謝だね」と。受賞を知って涙が出たそうです。核被害の当事者として体験を語ってきた被爆者に光が当たり、核実験で被曝(ひばく)した家族を持つ友人自身も励まされたのだと思う。

 ≪2人の曽祖父はともに医師で、原爆投下直後の広島と長崎で救護に当たった。大学の先輩で、日本被団協の初代事務局長を務めた藤居平一さん(1996年に80歳で死去)に関する本も読んだ。≫

 藤居さんの訴えた「まどうてくれ(元に戻してくれ)」は、核兵器の非人道性を表しています。命や健康、社会的なつながりや自然環境を取り返しのつかないほど奪うのが核兵器。今もなお「まどうてくれ」という叫びが響き続けているのが世界の現状です。被害者の取り組みをたたえるノーベル平和賞を一過性のものにせず、どう生かしていくかが、私たちに課せられています。(宮野史康)

たかがき・けいた
 広島市安佐南区生まれ。崇徳高では新聞部に所属し、被爆建物の旧陸軍被服支廠(ししょう)や旧制崇徳中の原爆被害を取材した。現在は早稲田大4年生。22歳。

(2024年11月15日朝刊掲載)

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