リアルな広島 平和のメッセージ 時川英之監督「惑星ラブソング」 広島国際映画祭 23日に初披露
24年11月16日
横山雄二さんとタッグ
広島市在住の時川英之監督が新作映画「惑星ラブソング」を完成させた。広島を舞台に過去と未来が交錯し、優しいメロディーが人々の心をつなぐ青春SFファンタジーだ。被爆80年を迎える広島から、映画を通じて世界にメッセージを発信する試み。来年の劇場公開を前に23日、広島国際映画祭のプログラムとしてお披露目する。(渡辺敬子)
広島の若者モッチ(曽田陵介)とアヤカ(秋田汐梨)は、交流サイト(SNS)の投稿でもらう「いいね」を増やす狙いで、米国人旅行者ジョンの観光案内役を買って出る。被爆樹木について学んだ小学生ユウヤは、夢の中で出会った少女と昔の広島で一緒に遊ぶ。やがて、テレビでよく見るUFO博士(八嶋智人)の正体や、ジョンが広島に来た理由が明らかになる―。
オール広島ロケで、時川監督の母校・天満小にある被爆樹木のプラタナスが重要な役割を果たす。脚本は自身の幼少期の記憶やドキュメンタリーの取材経験をベースに、映画仲間の意見を反映させた。主演の曽田陵介は松江市出身で広島工業大卒業生。広島市出身の部谷京子さんが美術を担当した。
水族館のある遊園地、お好み焼き店、平和記念公園と原爆ドーム…。見慣れた風景の中に、戦争を知らない若い世代が抱く違和感や葛藤、本音も忍ばせた。「広島に暮らす者としてのリアルな距離感が伝わるはず」と時川監督。「不思議な出来事が重なり、やがて一つの大きな渦になる。ユニークな物語に、さまざまな角度から平和のメッセージを込めた」
アナウンサーで映画監督の横山雄二さんがプロデューサーを務めた。2人のタッグは「ラジオの恋」「シネマの天使」「彼女は夢で踊る」に続き4作目。横山さんは「普通の若者がありふれた恋愛をしている街として広島の魅力を伝えたい。見終わった時に背筋が伸び、前向きな気持ちになってもらえたらうれしい」と語る。
「一人でも多くの人々に届く映画にしたかった」と時川監督。海外の観客へヒロシマを伝えたい願いと、国内の観客を楽しませたい思い。そのバランスを巡っては、かつてないほど横山さんと議論を重ねた。横山さんは「今までになかった広島の映画。見たことのない世界を味わってほしい」と呼びかける。
映画祭2日目の23日午後7時半から、中区のNTTクレドホールで上映。続いて時川監督と横山さん、主演の曽田によるトークショーを予定する。
(2024年11月16日朝刊掲載)