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初のドイツ語 家族伝承者 北九州のオペラ歌手豊嶋さん 親族の被爆体験 語り継ぐ

 被爆の記憶の継承に向けた広島市の家族伝承者養成事業で、ドイツ語の伝承者が誕生する。北九州市のオペラ歌手豊嶋(てしま)起久子さんで、日本語と英語以外では初。一家6人の中で唯一生き残り、孤児となった親族の体験を語り継ぐ。22日、最後の研修に臨んだ。

 豊嶋さんは呉市出身。留学や歌手活動のため1999年から約20年、ドイツやオーストリアで暮らした。現地で広島や原爆に関心を持つ人が多いと知り、帰国後に父のいとこ豊島(てしま)廣子さん(90)=福岡県=から体験を聞き取った。今年4月に日本語の家族伝承者になったが、ドイツ語圏の人が被爆の惨禍をより理解できるよう、ドイツ語での証言を決めた。

 廣子さんは45年8月6日を縁故疎開先の宮島(現廿日市市)で迎えた。広島市大手町(現中区)で暮らしていた両親やきょうだいも合流予定だったが、二度と会えなかった。

 起久子さんはこの日の研修で、ドイツ語を話せる市の海外経済交流員を前に発音などを確認した。「音楽活動では使わなかった言葉ばかりで難しいが、努力するしかない」と意気込む。来年1月から、求めに応じてドイツ語で講話に取り組む。(下高充生)

(2024年11月23日朝刊掲載)

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