[被団協ノーベル平和賞] ストップ戦争 世界に訴え 山口市原爆被害者の会・永野会長 オスロ訪問
24年12月3日
「今後の活動の礎に」
広島で1歳の時に被爆した山口市原爆被害者の会の永野和代会長(80)=同市矢原=が、10日にノルウェー・オスロである日本被団協へのノーベル平和賞授賞式に合わせて現地を訪れる。「戦争をやめるよう世界に訴え、今後の会の活動の礎にしたい」と話している。
日本被団協の平和賞が決まった10月11日、自宅のテレビのニュースで受賞を知った。驚きと同時に「広島、長崎で犠牲になった命と、後遺症に苦しみながら『二度と同じことを起こしてはならない』と訴えてきた人の思いが浮かんだ」と喜びをかみしめた。日本原水協とNGO(非政府組織)ピースボート(東京)が企画した、被爆者や市民団体メンバーの現地訪問に加わる。
永野さんは1歳の時、広島の爆心地から1・5キロの自宅玄関で被爆した。「怖くて聞きたくなかった」と被爆時の話は遠ざけてきた。約30年前、病床の母が亡くなる直前に「原爆の日は和代を抱いて主人を見送っていた。姿が見えなくなったから玄関を掃除しようと和代を置いた直後にぴかっと光った」と看護師に話すのを聞いたのが唯一の機会という。
自身が被爆者であることも伏せて暮らしていた。「社会の役に立ちたい」。60歳で思い立ち、山口市原爆被害者の会に加入。小中学校などで爆弾の恐ろしさや平和をつくるためにどうすればいいかについて講話したり、写真や紙芝居で当時の様子を伝える原爆展を開いたりしてきた。2021年から会長を務める。ただ「被爆者も減り、後継者が不足している」と継承活動の今後に危機感を抱く。
ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢を憂う。「声を上げ続けることを止めてはいけない。われわれの声が為政者を間違った方向に踏み切らせない、くさびの一つになる」と信じる。(江頭香暖)
(2024年12月3日朝刊掲載)