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社説・コラム

永田町発 首相 核政策定まらず

 核政策を巡る石破茂首相のスタンスが定まらない。開会中の臨時国会での論戦で、核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加を巡る発言は迷走。かつて唱えた米国との「核共有」は首相に就いてからは封印する一方、核抑止の必要性は繰り返し強調している。特徴的な3項目で整理した。(中川雅晴、堀晋也)

迷走 検証は前向き

■オブザーバー参加

 首相は6日の参院予算委員会で、米国の「核の傘」に頼りながらオブザーバー参加したドイツの事例を検証する意向を改めて示した。その上で、参加を探る対応かを立憲民主党の森本真治氏から問われると、「趣旨はそれで結構だ」と応じた。

 わずか4日前には異なる見解だった。2日の衆院代表質問で、立憲民主党の野田佳彦代表がオブザーバー参加を求めると「核兵器保有国は一カ国も参加していない」と説明。岸田内閣が多用した文言をそのまま使い、消極的な姿勢を見せた。

 首相は9月の総裁選中の取材にオブザーバー参加を「選択肢の一つ」とし、首相になった10月には「真剣に考える」とテレビ番組で述べていた。

持論を封印 釈明も

■核共有

 首相は9月掲載の米シンクタンクへの寄稿で北大西洋条約機構(NATO)のアジア版創設を提唱。その文脈で「米国の核シェアや核の持ち込みも具体的に検討せねばならない」と説いていた。

 核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」とした非核三原則を揺るがす内容だが、首相に就くと方針を転じる。今月3日の立憲民主党の辻元清美氏の参院代表質問には「非核三原則や原子力基本法をはじめとする法体系との関係から、認められない」と明言した。

 その上で「核共有」の真意は、核戦力を含む米国の日本防衛に関し「意思決定のプロセスを米国と意思疎通する」ための取り組みだと釈明した。

■核抑止

 6日の参院予算委で首相の核抑止へのスタンスが鮮明になった。ロシア、中国、北朝鮮を名指しし「核を持った専制独裁国家が(日本の)周りにある。抑止力をきちんと確保する」と訴えた。

 11月には核兵器廃絶の道筋を探るため、岸田文雄前首相が創設した国際賢人会議に「現在の国際社会を見渡せば、核抑止が必要という現実がある」とのメッセージを寄せた。

(2024年12月7日朝刊掲載)

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