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核兵器も戦争もない人間社会を 被団協ノーベル平和賞授賞式 田中熙代表委員演説 次世代に訴え

 被爆者の全国組織、日本被団協へのノーベル平和賞授賞式が10日、ノルウェーのオスロ市庁舎で開かれた。長崎で被爆した田中熙巳(てるみ)代表委員(92)が演説。米軍による原爆投下で親族5人を失った体験や結成68年になる被団協の歩みに触れ、「核兵器も戦争もない世界の人間社会を求め、共に頑張ろう」と呼びかけた。(オスロ発 下高充生)

 田中代表委員は「人間の死とはとても言えないありさま」で伯母たちが亡くなったと証言。生き残った被爆者が病や偏見に耐えながら被団協を結成し、核兵器廃絶と原爆被害に対する国家補償を求めてきたと伝えた。

 ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルのパレスチナ自治区ガザへの攻撃に触れ「『核のタブー』が壊されようとしている。限りない悔しさと憤りを覚える」と非難。すぐに発射できる核弾頭が世界で4千発もあるとして危機感を表し、「私たちがやってきた運動を次の世代が工夫して築いていくことを期待する」と訴えた。核兵器禁止条約の推進と廃絶の条約作りも促した。

 演説に先立ち、箕牧(みまき)智之代表委員(82)=広島県被団協理事長=が賞状を、田中重光代表委員(84)=長崎原爆被災者協議会会長=がメダルを壇上で受け取った。広島、長崎の被爆者や被爆2世、支援者たちでつくる被団協の代表団のほか、招待された広島、長崎の被爆者、高校生平和大使たちが見届けた。

 ノーベル賞委員会からは、ヨルゲン・フリードネス委員長(40)がスピーチ。被爆者に向け「被害者であることに甘んじず、沈黙を拒否し、立ち上がった。世界が必要としている光だ」と賛辞を連ねた。その上で「身体的な苦痛やつらい記憶にもかかわらず、自らの体験を生かして平和への希望に尽力することを選んだ全ての被爆者をたたえたい」と語り、すでに亡くなった人たちへの敬意も表した。

 賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1億5千万円)。被団協は被爆者運動に活用する考えでいる。

(2024年12月11日朝刊掲載)

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