被爆2世援護 控訴棄却 広島高裁 遺伝的影響「証明されず」
24年12月14日
被爆者を親に持つ被爆2世への援護措置を怠っているのは違憲として、広島への原爆投下で親が被爆した広島、山口県などの2世27人が国に1人当たり10万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が13日、広島高裁であった。高宮健二裁判長は放射線被曝(ひばく)の遺伝的影響は「証明されていない」と判断。請求を退けた一審広島地裁判決を支持し、原告の控訴を棄却した。原告側は上告する方針。
高宮裁判長は「放射線を直接浴びた可能性のある被爆者と、被爆時に存在していなかった2世とでは医学的・科学的知見に顕著な差異がある」と指摘。争点となった遺伝的影響による健康被害について「(影響は)明確に否定されているとまではいえないものの、医学的・科学的に証明されていない」とした。
2世に対する援護については、国の裁量に委ねられていると判断。2世を手当の支給などがある被爆者援護法の対象にしていないことは「差別的扱いにならない」として違憲と認めなかった。
控訴審で原告側は遺伝的影響について、動物実験などの研究や専門家の見解を踏まえ「健康被害の可能性がある」と主張。一方、国側は原告が示す研究などは「親の放射線被曝により2世の健康に影響が生じることの根拠にはならない」などと反論し、控訴棄却を求めていた。
厚生労働省健康局は「主張が認められた。被爆2世の健康不安への対応として健康診断を実施しており、引き続き適切に取り組む」としている。(向井千夏)
原告ら落胆と憤り 「僕らの苦しみが核の恐ろしさ」 被爆2世を巡る訴訟で広島高裁が原告の控訴を棄却した13日、被爆2世たちからは「とても受け入れられない」「最高裁の判断を求める」などと落胆と憤りの声が上がった。
「棄却する」。法廷で高宮健二裁判長の判決読み上げは30秒にも満たなかった。全国被爆二世団体連絡協議会(二世協)の平野克博事務局長(66)=廿日市市=は「差別や健康不安を抱える2世に裁判所はまったく寄り添ってくれなかった」と憤った。判決後、裁判所前で原告と弁護士は硬い表情で「不当判決」などと書かれた紙を掲げた。
原告側は閉廷後に広島市中区で集会を開いた。原告の寺中正樹さん(62)=山口市=は20代以降に十二指腸潰瘍や脳梗塞を患った。「2世の僕らがなぜこんなに苦しまなくちゃいけないのですか。それこそが核の恐ろしさじゃないのですか」と感情をむき出しにした。
同様の訴訟は長崎でも起こされ、福岡高裁が2月、原告の控訴を棄却した。原告側は上告している。集会では広島も上告する方針を決めた。在間秀和弁護団長は「判決は国の主張と同じ内容。不当な判断を確定させることはできない」と先を見据えた。(向井千夏)
(2024年12月14日朝刊掲載)
高宮裁判長は「放射線を直接浴びた可能性のある被爆者と、被爆時に存在していなかった2世とでは医学的・科学的知見に顕著な差異がある」と指摘。争点となった遺伝的影響による健康被害について「(影響は)明確に否定されているとまではいえないものの、医学的・科学的に証明されていない」とした。
2世に対する援護については、国の裁量に委ねられていると判断。2世を手当の支給などがある被爆者援護法の対象にしていないことは「差別的扱いにならない」として違憲と認めなかった。
控訴審で原告側は遺伝的影響について、動物実験などの研究や専門家の見解を踏まえ「健康被害の可能性がある」と主張。一方、国側は原告が示す研究などは「親の放射線被曝により2世の健康に影響が生じることの根拠にはならない」などと反論し、控訴棄却を求めていた。
厚生労働省健康局は「主張が認められた。被爆2世の健康不安への対応として健康診断を実施しており、引き続き適切に取り組む」としている。(向井千夏)
原告ら落胆と憤り 「僕らの苦しみが核の恐ろしさ」 被爆2世を巡る訴訟で広島高裁が原告の控訴を棄却した13日、被爆2世たちからは「とても受け入れられない」「最高裁の判断を求める」などと落胆と憤りの声が上がった。
「棄却する」。法廷で高宮健二裁判長の判決読み上げは30秒にも満たなかった。全国被爆二世団体連絡協議会(二世協)の平野克博事務局長(66)=廿日市市=は「差別や健康不安を抱える2世に裁判所はまったく寄り添ってくれなかった」と憤った。判決後、裁判所前で原告と弁護士は硬い表情で「不当判決」などと書かれた紙を掲げた。
原告側は閉廷後に広島市中区で集会を開いた。原告の寺中正樹さん(62)=山口市=は20代以降に十二指腸潰瘍や脳梗塞を患った。「2世の僕らがなぜこんなに苦しまなくちゃいけないのですか。それこそが核の恐ろしさじゃないのですか」と感情をむき出しにした。
同様の訴訟は長崎でも起こされ、福岡高裁が2月、原告の控訴を棄却した。原告側は上告している。集会では広島も上告する方針を決めた。在間秀和弁護団長は「判決は国の主張と同じ内容。不当な判断を確定させることはできない」と先を見据えた。(向井千夏)
(2024年12月14日朝刊掲載)