緑地帯 玉本英子 ウクライナ 戦火の地で⑦
24年12月17日
ウクライナ東部、ドネツク州リマン。ロシア軍がすぐ先に迫る戦闘地帯だ。今年2月、私はウクライナ軍の前線拠点に入った。民家を改造した狭い作業場では、兵士たちが精密工具を手に小型の自爆ドローンを製造していた。50センチほどの小さなドローン。まるでおもちゃのようだが、戦場を大きく変えた。
「これがカメラとアンテナ、機体の下にこうやって爆弾を取り付けるのよ」。そう説明してくれたのは、ドローン部隊の女性兵士シャマンカさん。「故郷のヘルソン東部地域は今もロシア軍に占領されている。家も何もかも失った。その怒りをドローンに託して戦っている」。スマートフォンの写真には、彼女の幼い娘が笑顔いっぱいの姿で写っていた。
シャマンカさんは林の中でドローンを飛ばし、腕前を披露してくれた。ゴーグルを装着し、そこに映るカメラ映像を見ながら手元のコントローラーを操作する。「標的を選定したら、一気に突っ込むの」
実際の戦闘を記録した映像を見せてもらった。上空から目標の戦車や装甲車を捉え、高速で向かっていくドローン。映像が途切れた瞬間が、爆発したことを示す。ロシア兵に向けて襲いかかるシーンがあった。近づいてくる機体を見つけた兵士は、必死に走って逃げようとする。最後に振り向いた時の彼の顔は恐怖で歪(ゆが)み、何かを叫ぼうとしているようだった。私の目の前にあるドローンは、紛れもなく人を殺す兵器なのだ。 (ジャーナリスト=大阪府)
(2024年12月17日朝刊掲載)
「これがカメラとアンテナ、機体の下にこうやって爆弾を取り付けるのよ」。そう説明してくれたのは、ドローン部隊の女性兵士シャマンカさん。「故郷のヘルソン東部地域は今もロシア軍に占領されている。家も何もかも失った。その怒りをドローンに託して戦っている」。スマートフォンの写真には、彼女の幼い娘が笑顔いっぱいの姿で写っていた。
シャマンカさんは林の中でドローンを飛ばし、腕前を披露してくれた。ゴーグルを装着し、そこに映るカメラ映像を見ながら手元のコントローラーを操作する。「標的を選定したら、一気に突っ込むの」
実際の戦闘を記録した映像を見せてもらった。上空から目標の戦車や装甲車を捉え、高速で向かっていくドローン。映像が途切れた瞬間が、爆発したことを示す。ロシア兵に向けて襲いかかるシーンがあった。近づいてくる機体を見つけた兵士は、必死に走って逃げようとする。最後に振り向いた時の彼の顔は恐怖で歪(ゆが)み、何かを叫ぼうとしているようだった。私の目の前にあるドローンは、紛れもなく人を殺す兵器なのだ。 (ジャーナリスト=大阪府)
(2024年12月17日朝刊掲載)