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国連本部で平和アート 被爆2世 広島の田中さん

■記者 水川恭輔

 被爆2世の現代美術作家、田中勝さん(39)=広島市西区=が8月11日~9月6日、米ニューヨークの国連本部で核兵器廃絶をテーマにした作品展を開く。来年5月に国連本部である核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向け廃絶への機運を高めようと企画した。

 田中さんと、原爆製造のマンハッタン計画にかかわった研究者を父に持つ米国人画家ベッツィ・ミラー・キュウズさん(64)が2001~07年に共同制作した5点。田中さんが撮影した風景写真にキュウズさんの幻想的な絵を合成し、原爆投下国と被爆国の立場を超えた「平和への願い」を表現している。

 ニューヨークの街を背景にした「マザー」(縦1メートル、横2メートル)は米中枢同時テロに触発されて制作した。「大地の精霊」が自由の女神に地球をささげる姿に、平和の構築と核兵器廃絶の使命が米国に託されている、とのメッセージを込めた。

 田中さんは、爆心地から約2・5キロの現在の西区己斐西町で被爆した父を持つ。1998年、米国の美術展でキュウズさんと出会い、共同制作を始めた。NPT再検討会議をにらみ、昨年7月に国連に展示企画を提出。今年5月末に「平和と反核の強いメッセージを伝えてほしい」と国連から申し出があった。

 8月に現地滞在する田中さんは「オバマ米大統領の就任で高まる廃絶への流れをさらに盛り上げるきっかけになれば」と語り、来場者との交流を心待ちにしている。

(2009年7月30日朝刊掲載)

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