中国地方2024回顧 <上> ヒロシマ描いた画家に光
24年12月25日
2025年の被爆80年を前に、ヒロシマを描いてきた画家たちの画業に光を当てる動きが目立つ一年だった。文芸では、ベテランを中心に地元作家の受賞や新刊出版が相次ぎ、活気を見せた。(木原由維、仁科裕成)
■ 美術
廿日市市のアートギャラリーミヤウチは、被爆画家の故入野忠芳の展覧会を開催。カラフルな傘や溶けた人物などのモチーフが登場する初期作を紹介し、代表作「裂罅(れっか)」に至る軌跡を伝えた。
入野、故香川龍介とともに被爆画家3人展を1995年から10年ごとに開いてきた美術家の田谷行平(広島市西区)が、中国文化賞を受けた。
毎年8月の「広島平和美術展」が節目の70回を迎えた。国内外から寄せられた絵画や彫刻などに加え、四国五郎たち創設メンバーの作品も展示。平和への思いを継承することを誓った。
安芸高田市出身で昭和の日本画壇をけん引した児玉希望の回顧展が中区の広島県立美術館で24年ぶりに開かれた。最新の研究成果も反映した展示が話題を呼んだ。西区の泉美術館は、パリで古典技法を学んだ廿日市出身の画家山本美次、昨年亡くなった新制作協会の洋画家、木下和の回顧展を開いた。
南区の広島市現代美術館が公募展をリニューアルし、呉市出身の平井亨季(こうき)が同美術館賞などをダブル受賞。軍港・呉と被爆地・広島のつながりをアニメーションで描いた受賞作が注目を集めた。
竹原市ゆかりの陶芸家で文化勲章受章者・故今井政之の没後初となる大規模回顧展が広島市中区の福屋八丁堀本店であった。
日本の西洋美術史研究の第一人者で、大原美術館(倉敷市)館長を約20年間務めた高階秀爾が92歳で鬼籍に入った。
■ 文芸・出版
広島市在住の小山田浩子は初の食エッセー集と3年ぶりの小説を出版した。同市在住の稲田幸久も「悪党」(角川春樹事務所)を刊行した。美作市出身のあさのあつこは、第13回日本歴史時代作家協会賞シリーズ賞に輝いた。
詩歌にも優れる下関市出身の竹中優子は、小説「ダンス」で第56回新潮新人賞を受賞。同作は第172回芥川賞の候補作としても注目される。
本紙中国詩壇ゆかりの詩人で、江田島市在住の松岡政則は詩集「ぢべたくちべた」(思潮社)で、第57回日本詩人クラブ賞と第39回詩歌文学館賞を受賞。ダブル受賞は史上初の快挙となった。広島市在住の詩人、望月遊馬(ゆま)が詩集「白くぬれた庭に充てる手紙」(七月堂)で第62回歴程賞を受賞。山口市の中原中也記念館は開館30周年を迎え、記念講演やイベントを催した。
紀伊国屋書店広島店(広島市中区)は開店50周年を迎え、出版関係者が集った記念パーティーに島田荘司たち地元ゆかりの作家がビデオメッセージを寄せた。中国地方の書店減少率は高止まる一方、店主独自のセレクトが光る「独立系書店」も相次いで誕生。書店の多様化が進んだ。(敬称略)
(2024年12月25日朝刊掲載)
独立系書店 相次ぎ誕生
■ 美術
廿日市市のアートギャラリーミヤウチは、被爆画家の故入野忠芳の展覧会を開催。カラフルな傘や溶けた人物などのモチーフが登場する初期作を紹介し、代表作「裂罅(れっか)」に至る軌跡を伝えた。
入野、故香川龍介とともに被爆画家3人展を1995年から10年ごとに開いてきた美術家の田谷行平(広島市西区)が、中国文化賞を受けた。
毎年8月の「広島平和美術展」が節目の70回を迎えた。国内外から寄せられた絵画や彫刻などに加え、四国五郎たち創設メンバーの作品も展示。平和への思いを継承することを誓った。
安芸高田市出身で昭和の日本画壇をけん引した児玉希望の回顧展が中区の広島県立美術館で24年ぶりに開かれた。最新の研究成果も反映した展示が話題を呼んだ。西区の泉美術館は、パリで古典技法を学んだ廿日市出身の画家山本美次、昨年亡くなった新制作協会の洋画家、木下和の回顧展を開いた。
南区の広島市現代美術館が公募展をリニューアルし、呉市出身の平井亨季(こうき)が同美術館賞などをダブル受賞。軍港・呉と被爆地・広島のつながりをアニメーションで描いた受賞作が注目を集めた。
竹原市ゆかりの陶芸家で文化勲章受章者・故今井政之の没後初となる大規模回顧展が広島市中区の福屋八丁堀本店であった。
日本の西洋美術史研究の第一人者で、大原美術館(倉敷市)館長を約20年間務めた高階秀爾が92歳で鬼籍に入った。
■ 文芸・出版
広島市在住の小山田浩子は初の食エッセー集と3年ぶりの小説を出版した。同市在住の稲田幸久も「悪党」(角川春樹事務所)を刊行した。美作市出身のあさのあつこは、第13回日本歴史時代作家協会賞シリーズ賞に輝いた。
詩歌にも優れる下関市出身の竹中優子は、小説「ダンス」で第56回新潮新人賞を受賞。同作は第172回芥川賞の候補作としても注目される。
本紙中国詩壇ゆかりの詩人で、江田島市在住の松岡政則は詩集「ぢべたくちべた」(思潮社)で、第57回日本詩人クラブ賞と第39回詩歌文学館賞を受賞。ダブル受賞は史上初の快挙となった。広島市在住の詩人、望月遊馬(ゆま)が詩集「白くぬれた庭に充てる手紙」(七月堂)で第62回歴程賞を受賞。山口市の中原中也記念館は開館30周年を迎え、記念講演やイベントを催した。
紀伊国屋書店広島店(広島市中区)は開店50周年を迎え、出版関係者が集った記念パーティーに島田荘司たち地元ゆかりの作家がビデオメッセージを寄せた。中国地方の書店減少率は高止まる一方、店主独自のセレクトが光る「独立系書店」も相次いで誕生。書店の多様化が進んだ。(敬称略)
(2024年12月25日朝刊掲載)