天風録 『節目の年に』
25年1月1日
1年のうちの一日に違いないのに、きょうはやはり心身が引き締まる。新年が始まる節目というだけでない。能登半島を中心とした地域が昨年、大震災に見舞われた。被災者をはじめ私たちにとって忘れられない特別な日だ▲明けたことしは昭和100年、戦後80年の節目に当たる。振り返れば激動の時代だった。戦後生まれ、ことし還暦の身にとって特に印象的なのは人類初の月面着陸、ベルリンの壁崩壊、関西と東北での大震災だろうか▲広島にとっては取りも直さず被爆80年。ピカに焼かれた被爆者の惨状を顧みず、大国は核開発を進めた。太平洋上で水爆実験まで。しかし反核の願いは、じわじわと世界へ。以前なら想像できなかったことまで実現し、核廃絶の希望が芽吹いている▲ローマ教皇は被爆地を訪問してきた。広島をオバマ米大統領が訪れ、被爆者と抱き合い、G7広島サミットに首脳が顔をそろえた。核兵器禁止条約が既に発効しており、昨年は日本被団協にノーベル平和賞が贈られた▲節目の年始めに決意をして行動を誓いたい。一人一人がいま一度、被爆者の証言を聞き、引き継ぎ、広めることを。国がやるべきことは核兵器禁止条約の批准である。
(2025年1月1日朝刊掲載)
(2025年1月1日朝刊掲載)