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連載・特集

ヒロシマの記録2024 1~12月

絶えぬ紛争 危機迫る時

 あの日、あの時、積み重ねてきた行動が、核兵器のない平和な世界につながった。後の世にそう語り継がれる未来を私たちは「共に」築いていかなければならない。

 12月10日、ノルウェー・オスロであった日本被団協へのノーベル平和賞授賞式。長崎で被爆した田中熙巳(てるみ)代表委員(92)はこう呼びかけ、演説を締めた。「核兵器も戦争もない世界の人間社会を求め、共に頑張ろう」

 人類滅亡を午前0時に見立てた「終末時計」は残り90秒を指す。ノーベル賞受賞者たち専門家が過去1年の世界情勢に基づいて決め、米科学誌が1947年から毎年発表。2023年と並び最短で、米ソ水爆実験を受けて残り2分になった53年より危機的状況にある。

 ロシアはウクライナへの侵攻を続け、核による脅しを繰り返す。パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘も10月で1年が過ぎた。ガザ側の死者は4万5千人を超え、多くを子どもや女性が占める。米国は5月に34回目の臨界前核実験を強行。中国や北朝鮮は核戦力の増強を図っている。

 国内に目を向けよう。日本政府は7月、米国が核兵器を含む戦力で日本防衛に関与する「拡大抑止」の強化に米政府と合意した。「非核三原則」の見直しを唱える政治家もいる。まさに国内外で「核が軽く語られる時代」(田中代表委員)が来ている。

 被団協は「ふたたび被爆者をつくるな」と国際社会に核兵器廃絶を訴えてきた。心身を襲う悲しみ、苦しみ、そして平和の尊さを込めた被爆者一人一人の証言の積み重ねを通じ「核のタブー」を築いた。平和賞受賞はそのタブーが弱まっていることへの警鐘でもある。

 25年は被爆80年。唯一の「戦争被爆国」をうたう日本政府は「核なき世界を目指す」と繰り返すだけでなく、行動で示す時だ。3月に核兵器禁止条約の第3回締約国会議が控える。オブザーバー参加は最低限で、速やかな加盟が多くの被爆者の願いだ。

 被爆者の平均年齢は85歳を超え、一人もいなくなる日が近づく。平和賞授賞式に合わせてオスロを訪ねた高校生平和大使4人は、同世代に原爆被害の悲惨さを伝えた。被爆者の思いを受け継ぎ、共に歩みを進める若者たちがいる。「核と人類は共存できない」という先人の言葉にいま一度耳を傾け、私たちも続こう。核兵器廃絶は終わりなき旅ではないと信じて。(渡辺裕明)

1月

 3日 1974年の佐藤栄作元首相へのノーベル平和賞授与を巡り、ノーベル賞委員会が批判を予想しながらも「日本の核保有を阻止した努力を強調すれば賛同が得られる」と結論付けていたことが判明

 13日 米軍による広島への原爆投下で米兵12人が死亡したと記録した連合国軍総司令部(GHQ)の捜査報告書がこの日までに見つかる。歴史研究家の森重昭さんの調査を裏付け

 15日 広島市と広島大、広島市立大、広島平和文化センターが「核兵器のない世界」に向けた共同研究を進める「ヒロシマ平和研究教育機構」を設立

 16日 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が最高人民会議(国会)で演説し、核兵器は「戦争抑止以外の第2の使命」があると核の先制使用の可能性に改めて言及。同国メディアが伝える

 19日 文化庁が広島市の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」全4棟を国重要文化財に指定▽非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のメリッサ・パーク事務局長が広島市を初めて訪れ、原爆資料館を見学

 22日 核兵器禁止条約の発効から3年

 25日 広島市が被爆の記憶の継承と発信へ人工知能(AI)を活用する調査研究を始めることが判明

 29日 北朝鮮が核弾頭搭載可能な新開発の潜水艦発射型戦略巡航ミサイルの発射実験を実施したと国営メディアが報じる

 30日 岸田文雄首相が衆参両院の本会議で施政方針演説。核兵器のない世界に向け、23年の広島市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)を踏まえ「現実的で実践的な取り組み」を継続し、強化すると言及

2月

 1日 ミャンマー国軍のクーデターから3年。軍政下の犠牲者たちを悼む集いが広島市の原爆ドーム前で開かれる

 16日 広島市が原爆資料館の混雑対策で、オンラインによる入館チケットの販売と一部時間帯の予約の受け付けを開始

 21日 広島市内の六つの被爆建物からなる「広島原爆遺跡」が国史跡に指定▽広島市の本川小平和資料館の被爆資料1点がなくなったことが判明

 22日 広島市が広島大本部跡地にある被爆建物の旧理学部1号館を巡り一部保存と活用に向けた基本計画案を公表。耐震化し、30年度の開館後に「ヒロシマ平和研究教育機構」が拠点を置き、被爆資料も展示

 23日 米競売会社のインターネットオークションに出品された原爆投下時刻を指す腕時計が2万4890ドル(約370万円)で落札▽原爆資料館の23年度の入館者数が176万252人(速報値)となり、4年ぶりに過去最多を更新

 24日 ロシアによるウクライナ侵攻開始から2年。両軍の戦死者は計19万人以上と指摘される

 27日 上川陽子外相が記者会見で核軍縮の国際的議論の促進を目的に、欧米とアジアの三つの研究機関に計30億円の拠出を表明

 28日 23年の広島市の平和記念式典前に参列者の誘導などに当たっていた市職員に集団で体当たりしたとして、広島県警が中核派活動家の男5人を暴力行為法違反(集団的暴行)の疑いで逮捕

 29日 ロシアのプーチン大統領が連邦議会に対する年次報告演説でウクライナ侵攻継続の考えを明確にし、戦略核兵器が完全な戦闘準備態勢にあると強調

3月

 1日 原爆資料館が混雑対策でオンライン購入したチケットでの入館を開始。予約者向けに開館時間も朝夕各1時間延長▽中部太平洋マーシャル諸島ビキニ環礁での米国の水爆実験で住民や日本の漁船が被曝(ひばく)してから70年

 8日 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館が、広島市西区出身の児童文学作家で被爆者の那須正幹さん(21年に79歳で死去)の遺影登録を発表

 9日 米CNNテレビがバイデン政権が22年後半、ロシアがウクライナを核兵器で攻撃する可能性を懸念し「厳格な備え」をしていたと報じる

 10日 米国の原爆開発計画「マンハッタン計画」を率いた科学者で「原爆の父」と呼ばれた故ロバート・オッペンハイマー博士の葛藤を描いた「オッペンハイマー」が米アカデミー賞の作品賞など計7部門で受賞▽カトリック系の平和団体「パックス・クリスティ」米国支部の巡礼団が、広島市の世界平和記念聖堂で被爆者6団体の代表者と会い、米国の市民として原爆投下を謝罪

 13日 ロシアのプーチン大統領は国営テレビが放送したインタビューで、ウクライナで戦術核の使用は考えなかったとする一方、国の存続が危機にさらされれば核使用を辞さないとの立場を改めて示す

 16日 核兵器を搭載した米軍艦船・軍用機の日本への寄港や着陸を日米間の事前協議なしで認める核密約が1959年、秘密交渉を経て成立する新たな経緯が米公文書から判明

 25日 米共和党の下院議員がイスラエル軍が侵攻したパレスチナ自治区ガザに関し「ナガサキやヒロシマのようであるべきだ。早く終わらせられる」と述べ、核兵器使用を促すような発言をする

4月

 1日 30年までの核兵器禁止条約への署名、批准を日本政府へ求める一般社団法人「核兵器をなくす日本キャンペーン」が発足▽原爆資料館の第14代館長に前広島市議会事務局長の石田芳文氏が就任

 3日 北朝鮮が極超音速弾頭を搭載した固体燃料式の新型中長距離弾道ミサイル「火星16」の発射実験をしたと同国メディアが伝える。金正恩朝鮮労働党総書記は全ミサイルの「核兵器化が実現した」▽長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)が北東アジアでの核使用リスク削減に向けた研究の最終報告書をまとめ、米中両国に「核の先制不使用」に関する対話を制度化すべきだと提案

 8日 ロシア北極圏ノバヤゼムリャ島の核実験場で、新たな核実験の準備が進んでいる可能性が高いことが判明

 10日 岸田文雄首相がバイデン米大統領とホワイトハウスで会談。共同声明に日米両国が「核兵器のない世界」の実現を決意しているとの内容も盛り込む

 11日 岸田首相が米連邦議会上下両院合同会議で演説。「核兵器のない世界」に言及したが、核超大国の議員を前に具体的な核軍縮への協力は呼びかけず

 16日 上川陽子外相が閣議で24年版外交青書を報告。日本の安全保障には「米国が提供する核を含む拡大抑止が不可欠」とする特集面を新設

 18日 イラン革命防衛隊幹部が、イスラエルがイランの核施設に対して反撃した場合、イスラエルの核施設を「最新兵器で攻撃する」と警告したとタスニム通信が伝える

 19日 広島県などでつくる「へいわ創造機構ひろしま」(HOPe)は核兵器に関する34カ国の23年の取り組みを採点した「ひろしまレポート」を公表。日本は広島市でのG7サミットを主導したが、核軍縮分野の評価を3年ぶりに下げた

 23日 広島市の「被爆体験証言者」として24年度に活動する被爆者は32人で過去10年で最少に

 24日 原爆資料館の23年度の入館者数が198万1782人で確定▽国連安全保障理事会は日米が共同提出した宇宙空間に核兵器や大量破壊兵器を配備しないよう各国に求める決議案を否決。常任理事国のロシアが拒否権を行使

5月

 2日 イラン政府が4月下旬、核合意の再建交渉の手詰まりを打開するため、60%まで高めたウラン濃縮度を20%まで引き下げる暫定案を米政府に提示したことが判明。見返りに経済制裁の限定解除を要求

 4日 岸田文雄首相がブラジルのサンパウロ市で被爆者の森田隆さんたちと面会

 6日 ロシア国防省がウクライナ侵攻の拠点となる南部軍管区で、「非戦略核」の使用を想定した演習準備を始めたと発表

 7日 広島市が平和記念式典で入場規制エリアを原爆ドーム周辺を含む平和記念公園全体に広げると発表。安全対策強化が理由

 11日 米国が24年前半と25年前半にネバダ州の核実験場内にある地下施設で臨界前核実験を計画していることが中国新聞の取材で判明

 14日 米エネルギー省核安全保障局(NNSA)がネバダ州で臨界前核実験を実施。21年9月以来でバイデン政権下で3回目

 19日 広島市でのG7サミット開幕から1年。平和記念公園に記念館開館

 20日 日本被団協に所属する北海道被爆者協会が会員の高齢化を理由に25年3月末の解散を決定したことが判明

 21日 ロシア国防省はウクライナ侵攻の拠点の南部軍管区で、戦術核の使用を想定した演習の第1段階を開始したと発表▽横浜市で国際賢人会議が2日間の日程で開幕し、米中ロ英仏の核保有五大国や非保有国の有識者が参加

 30日 広島市が平和記念式典を巡り、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を続けるイスラエルの政府代表に送った招待状に、一刻も早い停戦を求めるメッセージを記したことが判明

6月

 1日 平和首長会議に京都府八幡市が加盟。国内未加盟は長崎県佐世保市だけに▽故ロバート・オッペンハイマー博士の孫チャールズさんが広島市を初めて訪れ、被爆者と面会

 4日 広島市がAIを活用して画面上の被爆者と疑似対話ができる装置を開発することが判明

 5日 世界9カ国が6月時点で計約1万2120発(23年比約400発減)の核弾頭を保有しているとの推計をRECNAが発表

 8日 広島市で核兵器使用の違法性などを各国の専門家が議論する国際討論会開催

 10日 ベラルーシ国防省はロシア軍の戦術核使用を想定した軍事演習について、ベラルーシ軍が第2段階に参加していると発表▽米国の大気圏内核実験の影響で被曝し、がんなどを患った住民らを対象とする「放射線被曝補償法」が失効し、補償金申請の受け付けが終了

 12日 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長が記者会見で、核兵器がNATOの「究極の安全保障」と強調

 15日 イタリアであったG7サミットが閉幕。核軍縮は議題にならず

 17日 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、1月時点で中国が保有する核弾頭数が推計500発になったと発表▽ICANは核保有9カ国による23年の核兵器関連支出が推計で914億ドル(約14兆4千億円)だったとする報告書を発表

 20日 日本被団協が中国ブロック代表理事に島根県原爆被爆者協議会の本間恵美子会長を選出。被爆2世の役員就任は初▽米中両国の有識者や元政府当局者らが上海で3月、核兵器に関する会合を5年ぶりに開いたとロイター通信が伝える

 21日 広島県が4月に核実験中止を求めてロシアのプーチン大統領宛てに送った要請文を在日ロシア大使館が受け取りを拒否していたことが判明

 28日 ロシアのプーチン大統領が核兵器を搭載可能な中・短距離ミサイルの生産を再開し「配備を進めることが必要だ」と言及

核なき世界へ行動の時

7月

 1日 被爆者健康手帳を持つ被爆者が3月末時点で10万6825人となったことが厚生労働省のまとめで判明。平均年齢は85・58歳

 14日 米シアトルの公園から佐々木禎子さんをモデルにした銅像が盗まれたと米主要メディアが報道

 16日 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館が、演芸家で俳優の三代目江戸家猫八(本名岡田六郎)さん(01年に80歳で死去)の遺影を登録したと発表

 17日 広島県などが主催する有識者会議「ひろしまラウンドテーブル」が核保有国に先制不使用などを求める初の政策提言「ひろしまウオッチ」の草案をまとめる

 23日 スイス・ジュネーブでの核拡散防止条約(NPT)再検討会議第2回準備委員会で、広島市の松井一実市長と長崎市の鈴木史朗市長が演説。各国に核軍縮・不拡散措置の確実な進展を求める

 28日 日米両政府は外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)と、米国が核を含む戦力で日本防衛に関与する「拡大抑止」に関する初の閣僚会合を東京都内で開催。従来の高官級の実務者協議を閣僚級に格上げし、米国の「核の傘」を軸にした抑止力強化をアピール

 31日 長崎市が8月9日の平和祈念式典にイスラエルを招待しないと発表▽ロシア国防省がプーチン大統領の決定に基づき戦術核の使用を想定した第3段階の演習を開始したと発表

8月

 2日 NPT再検討会議第2回準備委は、ロシアが占拠するウクライナ南部ザポロジエ原発への懸念を盛り込んだ「議長総括」を作成し閉幕。核戦力の開示など核保有国の透明性確保に言及

 5日 HOPeが核兵器のない世界に向けた初の政策提言「ひろしまウオッチ」を発表。核保有国に先制不使用と、非保有国を核攻撃しない「消極的安全保障」の確約などを要請

 6日 米軍による広島市への原爆投下から79年。市は平和記念公園の入場規制を強化し、平和記念式典を開催。松井一実市長は平和宣言で「希望を胸に心を一つにして行動を起こせば、核抑止力に依存する為政者に政策転換を促すことが必ずできる」と市民社会に呼びかける。ロシア、ベラルーシの政府代表は3年連続で招かれず、イスラエルは駐日大使が参列

 9日 米軍の長崎市への原爆投下から79年。市が長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典を営む。イスラエルを招かなかったことを受け、米英などG7の6カ国と欧州連合(EU)の大使が欠席し、公使らが参列

 12日 ブラジル在住の被爆者森田隆さんが100歳で死去

 16日 広島市の原爆死没者名簿の記帳を1985年から担った被爆者で元市職員の池亀和子さんが82歳で死去

 18日 広島市の平和記念公園と米パールハーバー国立記念公園の姉妹公園協定に基づき、広島市がハワイに派遣した広島の若者と被爆者がパールハーバーを訪問

 22日 漫画「はだしのゲン」の作者で、12年に73歳で死去した中沢啓治さんが米国の漫画賞「アイズナー賞」で優れた功績がある漫画家を顕彰する「コミックの殿堂」を受賞。同日までに翻訳権代理会社を通じて妻ミサヨさんがトロフィーを受け取った

 26日 広島市が原爆ドームの定期的な健全度調査でドローンによる撮影を開始。初の試み

 28日 核保有五大国の一つ英国のリズ・トラス元首相が平和記念公園を初めて訪れ、原爆資料館の見学や原爆慰霊碑へ献花

9月

 3日 国が旧陸軍被服支廠4号棟の耐震化に着工。広島県所有の1~3号棟も10月2日に

 4日 広島市が旧ソ連時代に核実験が繰り返されたカザフスタンのセメイ市(旧セミパラチンスク市)と平和や医療などの分野で交流・連携する合意書の締結を発表

 9日 国の援護区域外で長崎原爆に遭い、被爆者と認定されていない被爆体験者44人(うち4人死亡)が、長崎県と長崎市に被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の判決で、長崎地裁は15人(うち2人死亡)を被爆者と認め手帳交付を命じた。15人がいた地区に放射性物質を含む「黒い雨」が降ったと判断。残る29人の訴えは退けた

 12日 核兵器廃絶を目指す科学者たちの国際組織「パグウォッシュ会議」が被爆80年の25年に広島市での世界大会開催を決定

 13日 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が核兵器研究所と兵器級核物質生産基地を訪れ生産状況を視察したと同国メディアが伝える。金氏は核物質の生産を加速させるよう指示

 16日 自民党総裁選の討論会で石破茂元幹事長が米国の核兵器を日本で運用する「核共有」について「非核三原則に触れるものではない」と述べ、議論の必要性を訴えた

 19日 ジュネーブの国際赤十字・赤新月博物館で、広島で被爆死した子どもの遺品の三輪車を復元した彫刻作品の常設展示が始まる▽政府が被爆80年を迎える25年に、被爆体験の証言者の海外派遣を強化する方針を固める

 21日 長崎原爆の全ての被爆体験者に関し、岸田文雄首相が医療費助成を拡充し被爆者と同等にする救済策を年内に開始すると発表。一方で被爆者とは認定せず、一部を被爆者と認めた長崎地裁判決に控訴する方針も表明▽岸田首相がバイデン米大統領の私邸を訪れ日米首脳会談。日米同盟の抑止力と対処力をさらに向上させると一致

 22日 岸田首相が国連本部であった地球規模の課題や国連改革を議論する未来サミットで演説。「核兵器のない世界」の実現に向け「歩みを止めるわけにはいかない」と訴える

 23日 岸田首相が国連本部で兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始に向けたハイレベルの友好国(フレンズ)会合を開いた。「核兵器のない世界」を国際社会の共通目標と明記した成果文書をまとめた

 25日 ロシアのプーチン大統領が核兵器使用の基準を定めた「核抑止力の国家政策指針」(核ドクトリン)の改定案を公表。従来の基準を引き下げ、無人機や巡航ミサイルがロシア領内に大規模に発射されるとの確度の高い情報を入手した場合でも、核攻撃に踏み切る可能性があると表明

10月

 1日 岸田文雄首相が退任。自民党の石破茂総裁が第102代首相に選出

 7日 パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘開始から1年。原爆ドーム前で犠牲者を悼む集会▽石破首相が衆院代表質問で核政策に触れ「非核三原則を政策上の方針として堅持をしており、乱す考えはない」と表明

 8日 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が創立60年を迎えた国防総合大学での演説で「敵が武力の使用を試みれば、核兵器の使用も排除しない」と威嚇。同国メディアが伝える

 10日 日本被団協が東京都内で都道府県組織の代表者会議を開催。25年の被爆80年に合わせ、衆参全国会議員にアンケートする方針を確認

 11日 ノーベル賞委員会が日本被団協へのノーベル平和賞授与を発表

 13日 バイデン米大統領が日本被団協の平和賞受賞決定に祝意▽石破首相がNHK番組で、核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を求める公明党や野党の提案を受け「真剣に考える」と述べる

 14日 オバマ元米大統領が平和賞受賞が決まった日本被団協を称賛

 15日 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館が、原爆資料館の初代館長を務めた長岡省吾さん(73年に71歳で死去)の遺影登録を発表

 16日 ロシア外務省のザハロワ情報局長が日本被団協への平和賞授与に関し「この数十年、ノーベル賞委員会は欧米諸国に支配され、政治的な目的のために利用されてきた」と批判

 17日 原爆資料館の24年度上半期の入館者数が118万8065人に上り、年間で過去最多だった23年度の同期より15%増。年200万人を初めて上回るペース

 29日 ロシア国防省がプーチン大統領の指揮下で戦略核戦力の演習をしたと発表。「核の3本柱」と呼ばれる大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、長距離爆撃機を使用

 30日 韓国国防省は北朝鮮が北東部豊渓里の核実験場で「核実験の準備をほぼ終えたとみられる」と説明

11月

 1日 北朝鮮が10月31日に平壌付近から発射実験したICBMは新型の「火星19」だと同国メディアが報じる▽国連総会第1委員会(軍縮)が核兵器廃絶を目指す日本提出の決議案を145カ国の賛成で採択。31年連続。日本被団協のノーベル平和賞受賞決定に言及し「核戦争に勝者はない」として、核保有国に軍拡競争回避への行動を求める

 6日 米国の大統領選でトランプ前大統領の返り咲きが決まる

 8日 国連総会第1委が日米が共同提出した宇宙空間に核兵器や大量破壊兵器を配備しないよう各国に求める決議案を159カ国の賛成で採択

 12日 原爆資料館の10月の入館者数が27万1923人に上り、月別最多

 17日 公益財団法人ヒロシマ・ピース・センターが被爆者で歴史研究家の森重昭さんに谷本清平和賞を贈る

 18日 北朝鮮メディアは金正恩朝鮮労働党総書記が演説で、核兵器開発の残る課題は戦争抑止や体制維持などのための核の先制使用に向けて「完全な稼働体制を整えることだけだ」と述べたと伝える

 19日 ロシアのプーチン大統領が核ドクトリン改定版を承認する大統領令に署名し、核攻撃に踏み切る軍事的脅威の条件を拡大

 21日 広島市がエディオンピースウイング広島の建設に伴う発掘調査で出土した旧陸軍の「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊(輜重隊)」の被爆遺構の一部公開を開始

 29日 広島市が原爆資料館に若い世代向けの展示を新設する方針を固めたことが判明▽原爆の「黒い雨」の被害者救済の新認定基準で岡山県に被爆者健康手帳を申請して却下されたとして、岡山市の女性が処分取り消しなどを求め岡山地裁に提訴。厚生労働省によると、新基準下での訴訟は広島県以外では全国初

12月

 2日 石破茂首相が衆院代表質問で、核兵器禁止条約第3回締約国会議へのオブザーバー参加に否定的な考え▽国連総会本会議が宇宙空間に核兵器や大量破壊兵器を配備しないよう各国に求める決議案を167カ国の賛成で採択。日本の核兵器廃絶決議案も152カ国の賛成で採択

 6日 広島市が平和記念式典や前後の平和学習に小中高生を派遣する自治体に旅費を補助する制度を創設する方針を示す

 9日 広島市が25年夏ごろに米パールハーバー国立記念公園で被爆の実態を伝える企画展を開く計画を明らかにする

 10日 日本被団協がノーベル平和賞受賞。ノルウェーのオスロ市庁舎での授賞式で、代表委員の箕牧(みまき)智之さん=広島県被団協理事長=が賞状を、田中重光さん=長崎原爆被災者協議会会長=がメダルを受け取った。田中熙巳(てるみ)さんは演説で核兵器廃絶への行動を呼びかけ

 13日 被爆2世への援護措置を怠っているのは違憲として、広島、山口県などの27人が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁は放射線被曝の遺伝的影響は「証明されていない」と判断。請求を退けた一審広島地裁判決を支持し、原告の控訴を棄却

 15日 広島で被爆し、10年後にケロイド治療のため渡米した女性25人の1人で、在米被爆者の笹森恵子さんが92歳で死去

 18日 米国防総省が中国の軍事動向に関する年次報告書を発表。中国が24年半ばの時点で600発以上の運用可能な核弾頭を保有していると推定。20年時点から約4年間で3倍近く増えた

 20日 広島で被爆し、被爆者運動や証言活動を長年続けた池田精子さんが92歳で死去

 24日 日本被団協代表委員の田中熙巳さんが記者会見で、ノーベル賞委員会のフリードネス委員長から当初は被団協への25年の平和賞授与を検討したが、被爆80年に向け「世界の世論を大きくしてほしいと、今年に決めた」と伝えられたと明かす

(2024年12月31日朝刊掲載)

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