[被団協ノーベル平和賞] 証言で世界変えられる 被爆者運動企画展 タライモ監督
24年12月28日
オスロで開催中 オブジェで「触れる」仕掛け
日本被団協のノーベル平和賞受賞を受け、ノーベル平和センター(ノルウェー)が今月、被爆者運動の歩みを伝える企画展「人類へのメッセージ」をオスロで始めた。展示監督のヘンリック・タライモさん(53)は、核兵器使用が許されないという「核のタブー」を知らしめた功績をたたえ、「被爆証言は穏やかな運動だが重みを持つ。大事な平和活動だ」と語る。(宮野史康)
―展示の狙いを教えてください。
広島、長崎への原爆投下から80年近く戦争で核兵器は使われていない。惨禍を証言し続けてきた被爆者が「核のタブー」を築いた。語ることで、世界は変えられる。
原爆の破壊と苦しみに加え、被爆者運動の歴史、被爆者の証言や肖像写真を展示した。来場者に次世代への語り手になってほしい。
―見どころは何でしょう。
証言の展示では、広島県産のスギを使った木組みのオブジェ千個を並べた。建築家の隈研吾さんが作った。日本被団協の証言集を基に、一つ一つに被爆地や年齢、性別が刻まれている。手に取って木目をなでたり、香りを嗅いだりして、証言に「触れる」仕掛けだ。被爆者の等身大の全身写真もある。被爆者と会ってほしい。
―制作期間は8週間と聞きました。
ノーベル賞委員会は事前に受賞者を知らせない。10月の発表時のライブ中継を見て準備を始めた。日本被団協の名前が呼ばれた瞬間、沈黙の後に大きな拍手と歓声が上がった。調査を進め、いかに被爆者が人類に尽くしてきたかを学んだ。日本の皆さんは誇りに思ってほしい。
ヘンリック・タライモ
1971年生まれ。国立ノルウェー科学技術博物館勤務を経て、2024年4月から現職。
ノーベル平和センター
歴代のノーベル平和賞受賞者の業績を伝える非営利の博物館。毎年、受賞者の活動と志を紹介する企画展を催す。子どもたちに向けた教材も作っている。授賞式が開かれるオスロ市庁舎そばにあり、年間約20万人が訪れる。
(2024年12月28日朝刊掲載)