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「核のタブー」新展示 原爆資料館 被爆80年の25年度 被爆者の視点交え発信

 広島市が2025年度、原爆資料館(中区)の東館1階に、核兵器使用の壊滅的な影響をテーマにした新展示を設ける方針を固めたことが分かった。被爆者の視点を交えて80年前の惨状を再認識し、日本被団協のノーベル平和賞受賞で注目される「核のタブー」を強く発信する内容になるとみられる。

 複数の関係者によると、新展示は東館1階の情報コーナー(約160平方メートル)辺りに常設する予定。想定では、熱線や爆風、火災に見舞われた被爆直後の広島の様子を映像、パネル、絵などを用い、時系列で分かりやすく伝える。市の被爆体験証言者として活動する被爆者たちから「あの日」の記憶を聞き取り、展示に生かすという。

 広島、長崎の惨禍を経て、核兵器は道徳的に使うことが許されないという「核のタブー」。ノーベル賞委員会は被団協への平和賞の授賞理由で、被爆者たちが目撃証言を通じてタブーを広めたと評価した。ただ、ウクライナ侵攻を続ける核超大国のロシアが「核の脅し」を繰り返し、パレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルも核を持つ。

 タブーが崩れかねない国際情勢の中、市は核兵器の非人道性の発信を強める必要性を認識。原爆犠牲者の遺品など実物資料や「核兵器の危険性」を伝える従来の展示を補完し、来館者の理解を助ける新展示を企画することにした。被爆80年事業として関連経費を25年度一般会計当初予算案に盛り込む方向で調整している。

 原爆資料館は23年度に過去最多の198万人超が入館。被団協の平和賞受賞も追い風に、24年度は初の200万人台を視野に入れている。(野平慧一)

(2025年1月6日朝刊掲載)

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