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核禁会議参加 明言せず 首相、被団協と面会

 2024年のノーベル平和賞を受賞した日本被団協の代表委員田中熙巳(てるみ)さん(92)=埼玉県新座市=たち8人は8日、石破茂首相と官邸で面会した。被団協側は核兵器廃絶を訴え、3月に米国で開かれる核兵器禁止条約の第3回締約国会議へのオブザーバー参加を求めた。首相は「自民党内にもいろんな意見がある」などと述べ、態度を明言しなかった。(樋口浩二、中川雅晴、宮野史康)

 面会は約30分間で、冒頭だけ公開。首相は受賞を「極めて意義深い。長年の努力に心から感謝する」とたたえた。出席者によると非公開の意見交換では、被団協側の出席者が一言ずつ思いを語り、最後に首相が発言。北朝鮮やロシア、中国を名指しして防衛力を高めるべきだとの持論を展開し、「核戦争を防ぎ、核のない世界をつくる道筋を議論し、一致点を見つけたい」と話した。

 面会後の取材に田中さんは「議論する時間が足りなかった」と吐露。「収穫があったとは受け止めていない」と語った。議論の機会を再び設けるように首相に申し入れたと明らかにした。

 核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加は、代表委員の一人箕牧(みまき)智之さん(82)=広島県北広島町=が首相に求めた。箕牧さんは中国新聞の取材に「首相は聞きっぱなし。がっかりだ」と話した。被団協が政府に求め続けている原爆被害への国家補償についても首相は消極的な姿勢を示した。

 オブザーバー参加を求めている公明党の斉藤鉄夫代表(広島3区)と広島、長崎選出の自民党議員たちでつくる「被爆者救済と核兵器廃絶推進議員連盟」の寺田稔会長(比例中国)も同席して発言した。斉藤氏は報道陣に「首相はオブザーバー参加したドイツの事例を検証しており、そこに希望を託したい」と述べた。

 被団協と首相の官邸での面会は、2009年11月以来。今回はノーベル賞の受賞決定をきっかけに石破首相が呼びかけた。

日本被団協
 正式名称は日本原水爆被害者団体協議会。1956年8月、長崎市での第2回原水爆禁止世界大会2日目に結成した。結成宣言「世界への挨拶(あいさつ)」では、「私たちの体験をとおして人類の危機を救おうという決意を誓い合った」と記す。1984年に原爆被害者の基本要求をまとめ、「核兵器なくせ」「原爆被害への国家補償」を運動の2本柱に据える。事務局は東京都港区にある。

(2025年1月9日朝刊掲載)

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