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社説・コラム

朝凪(あさなぎ) カンボジアカレーの味

 この正月の思い出の味は、ココナツミルクとスパイスたっぷりのカレーだった。つながりがあるカンボジア出身の技能実習生を招くと、袋いっぱいの食材を持参して振る舞ってくれた。

 カキ加工場で働く30代の彼女。母国にいる子どもとのビデオ通話が心の支えであること、職場の雑談で知らない広島弁を投げかけられたら笑顔で乗り切ること…。野菜を切りながら、近況を教えてくれた。

 大学院生時代、技能実習制度を研究した。四国の田舎にある零細縫製工場の中国人に給与明細をこっそり見せてもらい、時給300円の実態やブランド服の作り手が彼らだと知った。

 労働力ではなく、働く人として受け入れ守る。日本はその仕組みも意識も乏しいと痛感した。あれから15年。どう変わったか。カレーが舌でひりっとした。(社会担当・久保友美恵)

(2025年1月11日朝刊掲載)

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