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東京の武蔵野けやき会 被爆2世と証言集出版 差別の苦しみ 記憶継承の決意も

 東京都武蔵野市の原爆被害者でつくる「武蔵野けやき会」が、被爆80年に合わせて会員の証言集を自費出版した。被爆者が老いを深める中、被爆2世も家族の苦難などを寄せた。これからも2世と一緒に、次世代へ被爆の惨状を伝えていく。

 B6判164ページ。2008年に編んだ証言集の再掲も含め、被爆者37人の体験を収めた。爆心地から2・3キロの広島市皆実町(現南区)の自宅で被爆した会長の木岡紀久代さん(85)は、避難した丘の上から見た「不気味な光景」を振り返る。暗闇に赤い炎がゆらめき、「ドーン」という爆発音が何度も響いたという。

 進学先の東京で経験した差別もつづった。「広島の子の使った食器を使うと原爆の毒がうつる」と学生寮でうわさされ、1人で食事するようになった。「核兵器を廃絶し平和な世界にするため、語り続けたい」と記す。

 37編に加え、被爆2世3人も寄稿した。このうち、天野妙さん(49)は祖父母と母が広島で被爆。母から聞いた生活苦や差別などを「一家心中を考えるほどの苦難」と伝える。その記憶を継ぐことが「最大かつ最強のアクションだ」と決意を新たにしている。

 かつて110人を超えた会員は高齢化で減り、解散の危機にもひんした。木岡さんが立て直しに注力。昨年6月に被爆2世も会員にする規約に改め、今は2世の10人を含む計39人が活動する。

 編集中に日本被団協のノーベル平和賞受賞が決まった。広島で胎内被爆した副会長の松田隆夫さん(78)は「励みになる。核兵器がもたらす被害を伝え、廃絶を求める世論を大きくしたい」と話す。松田さん☎090(9382)5002。(宮野史康)

(2025年1月20日朝刊掲載)

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